判旨
商法512条に基づく報酬請求権が認められるためには、商人がその営業の範囲内において「他人のために」行為をすることが必要であり、単なる自己の転売目的の買入れはこれに該当しない。
問題の所在(論点)
商人が商品を買い受け、それを第三者に転売した場合、その買受け行為は商法512条にいう「他人のために」したものとして、売主に対して報酬を請求できるか。
規範
商法512条の報酬請求権が成立するためには、商人がその営業の範囲内において「他人のために」行為をすることが必要である。ここでいう「他人のために」とは、受任者や代理人のように、委託者の利益を図る目的で事務を処理することを指し、自己の利益のために行う取引(転売等)は含まれない。
重要事実
上告人は、被上告人から飼料を買い受けた。その後、上告人は当該飼料を第三者へ転売した。上告人は、この取引に関して商法512条に基づく報酬の支払いを求めて上告した。
あてはめ
本件において、上告人は被上告人から飼料を買い受け、それを他へ転売したに過ぎない。この事実は、上告人が被上告人の事務を代行したり、被上告人の利益を目的として動いたものではなく、自己の計算において転売益を得るための行為であることを示している。したがって、「被上告人のために」飼料の販売をしたものとは認められない。
結論
上告人の行為は「他人のために」したものとはいえず、商法512条の適用の余地はないため、報酬請求は認められない。
実務上の射程
商法512条の「他人のために」の意義を、事務処理の委託関係(準委任的性質)に限定する趣旨である。自己の利益を図る売買取引等において、相手方に対して「尽力したから報酬をせよ」という主張を封じる際の規範として機能する。
事件番号: 昭和29(オ)63 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人が、その権限の範囲内において、本人に代わって第三者を直接の代理人として選任することは、復代理人選任に関する民法104条の要件を欠く場合であっても、当該代理人にその権限が認められる限り有効である。 第1 事案の概要:上告会社(本人)の社員Dは、その担当業務として段ボール紙の買入れを行っていた。…