判旨
法人の目的の範囲外の行為であるからといって、直ちに取引相手方の過失を推定すべきではなく、法人の役員による背任行為について相手方が悪意又は重過失でない限り、当該相手方に法人の目的等に照らした過失があるとはいえない。
問題の所在(論点)
法人の役員が行った背任的行為について、取引の相手方が法人の目的範囲外であることをもって直ちに不法行為加功者としての過失を推定されるか。また、相手方が背任の事実を知らないことに過失がないと認められるか。
規範
法人の役員が行った行為が、仮に当該法人に対する背任又は横領等の不法行為を構成する場合であっても、取引の相手方がこれを知らなかったことについて過失があるか否かは、法人の目的の範囲内であるか否かという点のみによって直ちに決せられるものではない。相手方が当該不法行為(背任等)について知らず、かつ知らないことに過失がないといえる場合には、不法行為の加功者としての責任を負わない。
重要事実
上告会社(法人)の訴外役員Dが、被上告人との間でダイヤ等の売買契約を締結し、これに基づき現品を交付した。上告会社側は、当該契約は会社の目的の範囲外であり、Dによる交付行為は会社に対する背任又は横領にあたる不法行為であると主張。さらに、被上告人は法人の目的を確認すればDの行為が権限外であることを知り得たはずであり、不法行為の加功者としての過失が推定されるべきであると争った。
あてはめ
本件契約は、上告会社ではなくD個人と被上告人との間に成立したものである。宝石等の交付行為が会社に対する不法行為(背任等)を構成するとしても、会社の目的が所定の範囲に限定されているという事実だけで、直ちに被上告人がDの背任を知らなかったことにつき過失があると推定することはできない。上告会社の社長自らも被上告人に現品を交付した経緯等に照らせば、被上告人がDの背任行為を知らなかったことに過失は認められない。
結論
被上告人にはDの不法行為に対する加功者としての過失は認められず、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
法人の代表権制限や目的による制限がある事案において、取引相手方の保護(善意無過失)を判断する際、単に「登記された目的外であること」のみをもって相手方の過失を直ちに肯定しない姿勢を示す。役員の背任的行為に対する第三者の過失の有無を個別具体的に判断する際の基準となる。
事件番号: 昭和39(オ)1025 / 裁判年月日: 昭和42年4月20日 / 結論: 棄却
代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知りうべきであつた場合にかぎり、民法第九三条但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である。