石油製品配給規則第一条、第一一条、第一二条に違反し配給割当公文書と引換でなしにされた揮発油の譲渡といえども、必ずしも民法第七〇八条にいわゆる不法原因給付に当るとはいえない。
石油製品配給規則違反の給付と不法原因給付の成否
民法708条,石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)1条,石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)11条,石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)12条
判旨
民法708条の「不法」とは、強行法規違反のみならず、社会生活上の倫理・道徳を無視した醜悪なものであることを要し、その該否は行為の実質に即して当時の社会感情に照らし判断されるべきである。
問題の所在(論点)
統制法規たる臨時物資需給調整法等に違反してなされた揮発油の譲渡が、民法708条の「不法の原因のための給付」に該当し、不当利得返還請求が否定されるか。
規範
民法708条にいう「不法の原因」とは、単に強行法規に違反するのみならず、その社会において要求される倫理、道徳を無視した醜悪なものであることを必要とする。不法原因給付に当たるか否かは、当該行為の実質に即し、当時の社会生活および社会感情に照らし、真に倫理・道徳に反する醜悪なものと認められるか否かによって決すべきである。
重要事実
上告会社は、当時の臨時物資需給調整法および石油製品配給規則に違反し、配給割当公文書との引換えなしに、被上告会社に対して揮発油を売り渡した。原審は、当該売買が公序良俗に反し無効であるとした上で、本件給付が不法原因給付に当たるとして揮発油の不当利得返還請求を否定した。
あてはめ
本件揮発油の売買が、産業の回復振興という基本政策に基づく石油製品の譲渡制限に違反するとしても、直ちに不法原因給付に当たるとは限らない。不法原因給付と断じるには、単なる強行法規違反を超えて、当時の社会における倫理・道徳に反した「醜悪なもの」であったという具体的理由が必要であるが、原審はその点について十分な理由を示していない。
結論
本件譲渡が不法原因給付に当たるとした原判決には理由不備の違法がある。したがって、原判決を破棄し、当該行為が真に倫理・道徳に反する醜悪なものであったか否かを審理させるため、本件を差戻すべきである。
実務上の射程
強行法規違反=不法原因給付という短絡的な思考を戒める判例。公序良俗違反(90条)で契約が無効となる場合であっても、708条の「不法」はより狭義(倫理的非難性が高いもの)に解すべきであることを示しており、答案上は不当利得返還請求の可否を論ずる際の限定解釈の根拠として用いる。
事件番号: 昭和31(オ)1074 / 裁判年月日: 昭和35年9月16日 / 結論: 棄却
統制法規に違反した売買契約に基く給付が、民法第七〇八条にいう不法原因によるものかどうかは、その行為の実質が当時の国民生活並びに国民感情に照らし反道徳的な醜悪な行為としてひんしゆくすべき程度の反社会性を有するかどうかによつて決するのが相当である。