判旨
代理人が、その権限の範囲内において、本人に代わって第三者を直接の代理人として選任することは、復代理人選任に関する民法104条の要件を欠く場合であっても、当該代理人にその権限が認められる限り有効である。
問題の所在(論点)
代理人がその権限内の事務について第三者に代理権を授与する場合、民法104条の要件(本人の許諾またはやむを得ない事由)を具備する必要があるか。あるいは、代理人に直接代理権を授与する権限が含まれていれば足りるか。
規範
代理人がその担当業務につき、本人を直接代理する権限を第三者に授与することは、必ずしも民法104条(任意代理人による復代理人の選任)の要件を具備する場合に限られない。代理人が、本人を直接代理せしめる権限(授権権限)をあらかじめ有していると解される場合には、その授権に基づき選任された者は、有効に本人を代理する権限を有する。
重要事実
上告会社(本人)の社員Dは、その担当業務として段ボール紙の買入れを行っていた。Dは、会社が臨時工員として雇い入れたEに対し、上告会社を代理して段ボール紙の買入契約を締結する権限を授与した。上告会社は、Dに復代理人選任権(民法104条)がないことを理由に、Eの代理権を否定して契約の効力を争った。
あてはめ
本件において、社員Dは段ボール紙の買入れという業務を担当しており、その業務遂行の範囲内において、Eに対し直接上告人を代理させる権限を有していたと認められる。この場合、Eを復代理人として選任する形式をとる必要はなく、D自身の権限に基づく授権として有効である。Eが臨時工員という地位にあることは、かかる授権の効力を妨げるものではない。
結論
社員DによるEへの代理権授与は有効であり、Eが行った契約の効果は上告会社に帰属する。上告棄却。
実務上の射程
本判決は、組織内における権限分配において、上位の代理人が下位の者に本人を代理する権限を「直接」与えることが、復代理(民法104条以下)の枠組みを経ずとも、授権権限の解釈として認められることを示している。実務上は、代理権の範囲に『他者への授権権限』が含まれているか否かの解釈問題として処理すべき局面で活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)93 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権者集会において、第三者が債権者と債務者の間に立って話し合いを斡旋する行為は単なる事実上の行為に過ぎず、民法109条や110条の表見代理が適用される余地はない。 第1 事案の概要:上告会社に対する債務解決を協議するための債権者集会において、年長者である訴外Dが、出席債権者らと上告会社係員との間で…