判旨
訴状に「委託金の返還を請求する」旨の記載がある場合、当該訴状の送達によって委託契約解除の意思表示がなされたものと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
訴状における「委託金の返還を請求する」旨の記載およびその送達によって、契約解除の意思表示がなされたと認めることができるか。
規範
契約の解除権を有する者が、相手方に対して当該契約に基づく給付の返還を求める訴えを提起した場合、訴状における返還請求の表示には、特段の事情のない限り、前提となる契約解除の意思表示が含まれているものと解される。
重要事実
上告人と被上告人との間で委託契約(詳細は判決文からは不明)が締結され、これに伴い委託金が交付されていた。その後、被上告人は上告人に対し、本件委託金の返還を請求する旨を記載した訴状を提出し、当該訴状が上告人に送達された。
あてはめ
本件訴状には「被告に対し本件委託金の返還を請求する」旨が明記されている。委託金の返還を求めることは、前提として当該委託契約を終了させる意思を有していることを外部に表明するものといえる。したがって、右訴状の送達により、相手方に対して本件委託解除の意思表示が到達したものと評価するのが相当である。
結論
訴状の送達により委託解除の意思表示があったと認められるため、原審の判断に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
契約解除の意思表示が事前に明確になされていない場合であっても、訴状における返還請求の記載をもって解除の意思表示に代えることができるとする実務上重要な判断である。答案上は、解除権の行使時期や意思表示の到達の有無が問題となる場面で、訴状送達による解除の効力を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)344 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和32(オ)831 / 裁判年月日: 昭和36年4月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】売買の委託等の商取引において契約当事者が誰であるかは、商談の経緯、帳簿の記載、仕切書の宛名、事前の連絡状況等の諸般の事情を総合して判断すべきである。形式的な書面の記載のみならず、取引の実態や当事者の合理的な行動原理に照らして真実の委託者を確定する必要がある。 第1 事案の概要:被上告人(組合)は、…