本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結された場合において、復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅する。
復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡した場合と復代理人の本人に対する受領物引渡義務
民法104条,民法107条2項,民法646条1項
判旨
復代理人が事務処理により受領した金銭等を代理人に引き渡したときは、特段の事情がない限り、本人に対する受領物引渡義務も消滅する。この理は、復々代理人が選任された場合における復々代理人と復代理人との関係についても同様に妥当する。
問題の所在(論点)
復代理人(または復々代理人)が、選任者である代理人(または復代理人)に対して受領物を引き渡した場合、本人に対する受領物引渡義務(民法646条1項、107条2項)は消滅するか。
規範
民法107条2項(現106条2項)により本人・復代理人間に直接の権利義務が生じるとしても、それは便宜上の措置にすぎず、各々の委任契約に基づく権利義務関係を消滅させるものではない。したがって、復代理人が受領物を代理人に引き渡したときは、代理人に対する引渡義務が消滅するとともに、本人に対する引渡義務も消滅する。ただし、代理人に引き渡すべきではない「特別の事情」がある場合はこの限りではない。
重要事実
本人は、Dに損害賠償金の請求・受領権限および復代理人選任権限を委任した。DはFを復代理人に選任し、Fはさらに上告人を復々代理人に選任した(復々任権の有無は適法と認定)。上告人は保険会社から賠償金249万円を受領し、これを復代理人Fに交付した。その後、FはDに交付したが、本人には全額が渡らなかったため、本人が復々代理人たる上告人に対し、受領金の引渡を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、復々代理人である上告人は、自身を選任した復代理人Fに対して受領した賠償金を交付している。これにより、上告人のFに対する引渡義務は履行により消滅した。本人・復代理人間に直接の義務を認める規定があるからといって、上告人がFに交付した事実を無視して本人への義務のみが存続すると解することはできない。また、Fに交付すべきではない「特別の事情」については、本人側から特段の主張・立証がなされていない。したがって、上告人のFへの交付をもって、本人に対する引渡義務も消滅したと評価される。
結論
復代理人(復々代理人)が代理人(復代理人)に受領物を引き渡したときは、本人に対する引渡義務も消滅するため、本人の請求は認められない。
実務上の射程
復代理人の法的地位が「本人および代理人」の両者に対して義務を負う重畳的なものであることを前提としつつ、一方への履行による他方の義務消滅を認めた。答案上は、受領物引渡請求の拒絶事由として、代理人への弁済(履行)を主張する際の根拠として活用する。また、復々代理人の場合にも同様の論理が及ぶことを示す際に有用である。
事件番号: 昭和29(オ)847 / 裁判年月日: 昭和30年8月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】寄託を委任したからといって、当然に寄託関係の終了に伴う返還を受ける権限まで付与されたとは解されず、代理権限なき者への返還は債務不履行を構成する。また、倉庫業者として当然払うべき注意義務を尽くさない限り、受取人に代理権限があると信じたことについて正当な理由があるとはいえない。 第1 事案の概要:債権…
事件番号: 昭和38(オ)960 / 裁判年月日: 昭和41年2月17日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】訴訟代理人が上告取下および復代理人選任の特別授権を受けている場合、当該代理人から適法に復任された復代理人が行う上告取下げは、本人が直接復代理人に授権していなくとも有効である。 第1 事案の概要:上告人らは弁護士Eに対し、上告取下げおよび復代理人選任の特別授権を含む訴訟委任をしていた。Eは、相手方と…
事件番号: 昭和27(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和29年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物の引渡義務の履行不能に基づく代替賠償(損害賠償)を請求する場合、その賠償額は目的物自体の価格により算定すべきであり、請負代金や税金相当額を当然に控除すべきではない。 第1 事案の概要:被上告人(注文者)は、上告人(請負人)に対し、製織委託契約(請負契約)に基づき製織品の引渡を請求した。しかし、目…