一 被保険者の運行供用者責任の成否について保険会社が争つたため、交通事故の被害者が自動車損害賠償保障法一六条一項の規定に基づき保険会社に対し損害金支払請求の訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる限度で、交通事故と相当因果関係がある損害というべきである。 二 保険会社が自動車損害賠償保障法一六条一項の規定に基づいて被害者に対して負担する債務は、商法五一四条所定の「商行為ニ因リテ生シタル債務」にはあたらない。
一 交通事故の被害者が自動車損害賠償保障法一六条一項の規定に基づき保険会社に対して提起した損害金支払請求訴訟について支出した弁護士費用が交通事故と相当因果関係のある損害と認められた事例 二 保険会社が自動車損害賠償保障法一六条一項の規定に基づいて被害者に対して負担する損害賠償債務と商法五一四条
自動車損害賠償保障法16条1項,商法514条
判旨
自動車損害賠償保障法16条1項に基づく直接請求権の行使においても弁護士費用は損害に含まれ、その損害賠償債務の法定利率は民法所定の年5分(当時の規定)が適用される。
問題の所在(論点)
1. 被害者が自賠法16条1項に基づき保険会社に対して直接請求を行う場合、弁護士費用を損害として請求できるか。 2. 保険会社が負担する直接請求権に基づく損害賠償債務の遅延損害金に、商事法定利率(年6分)が適用されるか、民事法定利率(年5分)が適用されるか。
規範
1. 弁護士費用:不法行為の被害者が訴訟追行を弁護士に委任した場合、事案の難易、請求額、認容額等を斟酌して相当と認められる額の範囲内で、当該不法行為と相当因果関係に立つ損害となる。この理は、被害者が自賠法16条1項に基づき保険会社へ直接請求する場合も同様である。 2. 法定利率:自賠法16条1項に基づく直接請求権は、被害者が保険会社に対して有する損害賠償請求権そのものであり、被保険者の保険金請求権の変形ではない。したがって、保険会社の当該債務は「商行為によりて生じた債務」(旧商法514条)には当たらない。
重要事実
被害者Dは、ダンプカーの運行によって傷害を受け死亡した。Dの遺族である被上告人らは、自賠法16条1項に基づき、保険会社である上告人に対し、損害賠償額の支払を直接請求する訴えを提起した。原審は、損害として弁護士費用を認めるとともに、遅延損害金の利率について、商事法定利率である年6分(当時の規定)を適用して認容したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
1. 弁護士費用について、被害者が自己の権利擁護のために訴訟を余儀なくされ弁護士に委任した事実は、加害行為と相当因果関係にある損害と認められる。これは直接請求の場合も損害賠償の性質を有する以上、同様に解すべきである。 2. 利率について、直接請求権は被害者自身の損害賠償請求権であり、加害者の商行為性が承継されるものではない。保険会社の支払義務も商行為自体から生じた債務とはいえないため、民法所定の法定利率によるべきである。
結論
1. 弁護士費用は、相当と認められる範囲で相当因果関係にある損害として認められる。 2. 保険会社の損害賠償債務には商事法定利率(年6分)ではなく、民事法定利率(年5分)が適用される。
実務上の射程
自賠法上の直接請求であっても、その実体は損害賠償請求であるため、弁護士費用の損害賠償性が肯定される。一方で、保険会社が営利企業であっても、損害賠償債務そのものは商行為から生じたものではないため、法定利率は民事のものが適用されるという区別を論じる際に用いる。
事件番号: 平成21(受)1923 / 裁判年月日: 平成24年4月27日 / 結論: その他
1 損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づき支払われるべき保険金の額は,損害の元本の額から,自動車損害賠償責任保険等からの支払額の全額を差し引くことにより算定すべきであり,上記支払額のうち損害の元本に対する遅延損害金に充当された額を控除した残額を差し引くことにより算定す…