1 損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づき支払われるべき保険金の額は,損害の元本の額から,自動車損害賠償責任保険等からの支払額の全額を差し引くことにより算定すべきであり,上記支払額のうち損害の元本に対する遅延損害金に充当された額を控除した残額を差し引くことにより算定すべきではない。 2 自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づく保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率は,商事法定利率である年6分と解すべきである。
1 損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づき支払われるべき保険金の額の算定方法 2 自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づく保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率
(1,2につき)民法91条 (1につき)保険法第2章 損害保険 (2につき)商法514条
判旨
1. 無保険車傷害保険金の額は、被害者の損害元本の額から、支払われた自賠責保険金等の全額を差し引いて算定すべきであり、損害元本に対する遅延損害金に充当された額を控除した残額を差し引くのではない。 2. 無保険車傷害保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率は、商事法定利率(年6分)による。
問題の所在(論点)
1. 無保険車傷害保険金の額を算定する際、控除すべき「自賠責保険金等の額」に、損害元本に対する遅延損害金充当額を含めるべきか。 2. 無保険車傷害保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率は、民事法定利率(年5分)か、商事法定利率(年6分)か。
規範
1. 無保険車傷害保険金は、被害者の損害元本を補填するものであり、損害元本に対する遅延損害金を補填するものではない。したがって、約款上「自賠責保険金等の額を差し引く」とある場合、その全額を損害元本から差し引くべきである。 2. 無保険車傷害保険金の支払債務は、商人である保険会社との間の保険契約に基づき、商行為によって生じた債務(商法514条)にあたる。その性質が賠償義務者に対する損害賠償請求に代わるものであっても、遅延損害金の利率は商事法定利率によるべきである。
重要事実
1. 上告人X1は交通事故により後遺障害を負い、その両親X2, X3および子X4と共に、保険会社(被上告人)に対し、無保険車傷害条項に基づき保険金等の支払を求めた。 2. 本件約款では、保険金額は損害額から「自賠責保険金等」を差し引いた額とし、保険金請求の手続から30日以内に支払う旨の定めがあったが、遅延損害金の利率に関する明文はなかった。 3. X1は事故後、自賠責保険金(4000万円)および障害基礎年金を受領した。 4. 原審は、自賠責保険金等について損害元本への充当後の残額を差し引くべきとし、また遅延損害金利率を民事法定利率(年5分)としたため、Xらが上告した。
あてはめ
1. 約款の解釈上、本件保険金は損害元本の補填を目的とするものである。ゆえに、自賠責保険金等が保険金の弁済期後に支払われた場合であっても、損害元本に対する遅延損害金への充当を考慮せず、受領した全額を元本から差し引くのが相当である。原審が遅延損害金への充当を認めた点は、約款の解釈として誤りである。 2. 保険金の支払債務は、商人である被上告人との保険契約という「商行為」から生じた債務である。損害賠償請求権を実質的に代替する性質があるとしても、債務の発生原因が商行為である以上、商法514条が適用される。したがって、利率は年6分(当時)と解される。
結論
1. 保険金額の算定において、自賠責保険金等は損害元本に対する遅延損害金への充当を認めず、その全額を差し引く。 2. 無保険車傷害保険金の遅延損害金利率は商事法定利率(年6分)による。
実務上の射程
保険会社に対する無保険車傷害保険金請求訴訟において、既払金の控除方法(元本先充当の否定)および遅延損害金利率(商事利率の適用)の判断基準として確立している。
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