一部保険の保険者が第三者の行為によつて生じた保険事故に係る損害の一部を被保険者に填補した場合において、被保険者が第三者に対して有する債権の額が損害額を下回るときは、右保険者は、右債権のうち填補した金額の損害額に対する割合に応じた債権を取得する。
一部保険における保険者の請求権代位の範囲
商法662条1項
判旨
一部保険の保険者が損害を填補した場合、保険代位(旧商法662条1項)により取得する権利の範囲は、一部保険の比例分担の原則に従い、填補額の全損害額に対する割合に応じた範囲に限定される。
問題の所在(論点)
一部保険において、保険者が被保険者に損害を填補した場合、旧商法662条1項(現保険法25条1項)に基づく保険代位により保険者が取得する権利の範囲、および被保険者がなお保有する権利の有無が問題となる。
規範
損害保険において、保険金額が保険価額(損害額)に達しない一部保険の場合、保険者が損害を填補したことにより代位取得する権利の範囲は、填補した金額の全額ではない。一部保険の比例分担の原則に基づき、保険者は「填補した金額の損害額に対する割合」に応じて、被保険者が第三者に対して有する権利を代位取得するにとどまると解すべきである。
重要事実
上告人(被保険者)は、被上告人B1(運送人)との間で車両の海上運送契約を締結したが、フェリーの動揺により車両が全損する事故が発生した。車両損害額は390万円であり、事故の過失割合は上告人5割、B1が5割であった。そのため、上告人のB1に対する損害賠償請求権は195万円であった。一方、上告人は一部保険の保険者である附帯上告人から、車両保険金として300万円の支払を受けた。原審は、上告人が受領した保険金(300万円)が賠償請求権(195万円)を上回るため、損益相殺により請求権は全て消滅したと判断した。
あてはめ
本件では、車両損害額390万円に対し保険金が300万円であるから一部保険に当たる。この場合、保険者が代位取得する権利の範囲は、賠償請求権(195万円)に「保険金(300万円)/損害額(390万円)」の比率を乗じた額、すなわち150万円(195万×10/13)に限定される。上告人(被保険者)は、B1に対する195万円の請求権のうち、保険者が代位取得した150万円を除く残額45万円については、なお権利を保有しているといえる。したがって、保険金受領のみをもって請求権が全額消滅したとする原審の判断は誤りである。
結論
一部保険の保険者は、填補額の損害額に対する割合に応じてのみ権利を代位取得する。被保険者は、損害賠償請求権のうち代位された部分を除く残額について、依然として加害者に対し請求権を有する。
実務上の射程
一部保険における保険代位の範囲について「比例説」を採用した重要判例である。答案上では、保険法25条1項(または旧商法662条1項)の解釈として、被保険者の優先的地位をどこまで認めるかの文脈で用いる。本判決は、全損害が填補されない限り被保険者が優先するという「被保険者優先説(差額説)」ではなく、保険者も一定割合で代位する「比例説」を採っている点に注意が必要である。
事件番号: 昭和55(オ)188 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: 棄却
自動車保険普通保険約款に、加害者の保険会社に対する保険金請求権は、加害者と被害者との間で損害賠償額が確定したときに発生し、これを行使することができる旨の規定があつても、被害者が加害者に対する損害賠償請求と保険会社に対し加害者に代位してする保険金請求とを併合して訴求している場合には、右保険金請求訴訟は、将来の給付の訴えと…