交通事故により死亡した者が、生前に、当該事故により傷害を受けた者として自動車損害賠償保障法施行令(昭和五三年政令第二六一号による改正前のもの)二条一項二号イ所定の傷害につきその保険金額である一〇〇万円全額の保険金及び同号ロ以下所定の後遺障害についての保険金を受領していたときは、死亡により、前者は同項一号ロ所定の死亡に至るまでの傷害についての保険金に、後者は同号イ所定の死亡による損害の保険金に充当しなおされる。
交通事故により死亡した者が生前に自動車損害賠償責任保険により傷害を受けた者として受領していた保険金と死亡した者としての保険金への充当
自動車損害賠償保障法13条,自動車損害賠償保障法施行令(昭和53年政令第261号による改正前のもの)2条1項
判旨
自動車損害賠償責任保険において、被害者が傷害・後遺障害保険金を受領した後に死亡した場合、既受領金は死亡保険金の限度額における各費目に充当し直されるべきであり、損害が全額填補されていれば更なる請求は認められない。
問題の所在(論点)
交通事故の被害者が傷害・後遺障害の保険金を受領した後に死亡した場合において、自賠責法施行令2条1項の「死亡」と「傷害・後遺障害」の各限度額の関係、および既受領保険金の充当の可否が問題となる。
規範
自動車損害賠償保障法に基づく保険金支払において、同一の事故により傷害・後遺障害が生じた後に被害者が死亡した場合、既に支払われた傷害による損害(施行令2条1項2号イ)及び後遺障害による損害(同号ロ以下)の保険金は、それぞれ死亡に至るまでの傷害による損害(同項1号ロ)及び死亡による損害(同項1号イ)の保険金に充当し直されるものと解する。この再計算の結果、損害が全額填補されている場合には、法16条に基づく新たな損害賠償額の支払請求は認められない。
重要事実
被害者Eは交通事故により傷害を負い、加害者の自賠責保険から傷害による損害として100万円、後遺障害による損害として952万円の計1052万円を受領した。その後、Eが事故との相当因果関係をもって死亡したため、相続人である上告人が、死亡による損害(弁護士費用含め合計約900万円)について、法16条に基づき被上告人(保険会社)に対して支払を求めた。
あてはめ
本件では、Eが既に受領した傷害分100万円は、死亡保険金の枠組みにおける「死亡に至るまでの傷害による損害」の限度額に充当される。また、後遺障害分として受領した952万円は「死亡による損害」の限度額に充当される。Eの死亡による損害額は約900万円であり、既に充当し直されるべき既受領保険金(952万円等)によって全額填補されているといえる。したがって、重ねて支払を求める余地はない。
結論
亡Eの死亡による損害は既受領保険金の充当により全額填補されているため、上告人の請求は排斥される。
実務上の射程
自賠責保険の限度額管理に関する実務上の取扱いを確認したものである。傷害から死亡へ移行した場合、保険金枠は別個に累積するのではなく、死亡時の限度額(本件当時の令2条1項1号)という単一の枠組みに再構成され、既払金はその内訳に従って費消されることを示している。
事件番号: 令和4(受)648 / 裁判年月日: 令和5年10月16日 / 結論: 破棄自判
被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、上記被害者の遺族に対し、上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について、人身傷害保険金として給付義務を負うとされている人身傷害保険金額に相当する額の金員を支払った場合、上記金員について作成された仮協定書に自動車損害賠償責任保険からの…