一 交通事故により死亡した女児の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するにあたり、賃金センサスによるパートタイム労働者を除く女子全労働者・産業計・学歴計の表による各年齢階級の平均給与額を基準として収入額を算定しても不合理なものとはいえない。 二 交通事故により死亡した女児の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するにあたり平均給与額の五割相当の生活費を控除しても不合理なものとはいえない。 三 ライプニツツ式計算法は、交通事故の被害者の将来の得べかりし利益を現在価額に換算するための中間利息控除の方法として不合理なものとはいえない。
一 女児の逸失利益をパートタイム労働者を除く女子全労働者の平均給与額によつて算定することの当否 二 女児の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するにあたり平均給与額の五割相当の生活費を控除することの当否 三 将来の得べかりし利益を現在価額に換算するための中間利息控除の方法とライプニツツ式計算法
民法709条,自動車損害賠償保障法3条
判旨
幼児(女児)の逸失利益算定において、賃金センサスの女子全労働者平均給与を基準とし、生活費として5割を控除し、ライプニッツ方式で中間利息を控除する算定手法は不合理ではない。
問題の所在(論点)
民法709条に基づく損害賠償請求において、幼児(特に女児)の逸失利益を算定する際の「基礎収入の基準」「生活費控除率」「中間利息控除方法」の合理性、および「慰謝料額の決定手法」が問題となった。
規範
1. 死亡した幼児の逸失利益は、賃金センサスによる女子全労働者(パートタイム労働者を除く)の平均給与額を基準として収入額を算定できる。2. 逸失利益算定における生活費控除率は、5割相当とすることが認められる。3. 中間利息控除の方法として、ライプニッツ式計算法を用いることは不合理ではない。4. 慰謝料額は、裁判所の裁量により、公平の観念に従い諸般の事情を総合的に斟酌して定める。
重要事実
当時8歳の女児が交通事故により死亡した。遺族である原告らは、損害賠償請求において、将来得べかりし利益(逸失利益)の算定手法(基礎収入、生活費控除率、中間利息控除方法)および慰謝料額について不服を申し立て、上告した。
あてはめ
1. 基礎収入について:将来の職業が不確定な幼児に対し、賃金センサスの統計データを用いることは客観的指標として妥当である。2. 生活費控除について:本件で採用された5割という控除率は、女子全労働者の平均給与を基礎とする場合の調整として不合理とはいえない。3. 中間利息控除について:ライプニッツ方式は、将来の利益を現在価値に換算する手法として確立された合理的な計算方法である。4. 慰謝料について:原審が確定した事実関係に基づき、裁量の範囲内で算定された額は著しく不当とはいえない。
結論
幼児の逸失利益につき、女子全労働者の平均賃金を基礎とし、生活費5割を控除し、ライプニッツ方式で算出する原審の判断を維持し、上告を棄却した。
実務上の射程
司法試験の答案上、死亡逸失利益の算定(特に年少女子)に関する論点において、実務上のスタンダード(賃金センサス利用・生活費控除・ライプニッツ方式)が判例上も是認されていることを示す根拠として活用する。また、慰謝料が「裁判所の裁量」であることを論証する際の引用先となる。
事件番号: 昭和50(オ)656 / 裁判年月日: 昭和53年10月20日 / 結論: その他
一 交通事故により死亡した幼児の財産上の損害賠償額の算定については、幼児の損害賠償債権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなつた場合においても、将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきではない。 二 ライプニツツ式計算法は、交通事故の被害者の将来得べかりし利益を事故当時の現在価額に換算するための中間利…