1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が当該登記請求権を被保全権利として当該土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合に、当該債権者において当該一部分について分筆の登記の申請をすることができない又は著しく困難であるなどの特段の事情が認められるときは、当該仮処分命令は、当該土地の全部についてのものであることをもって直ちに保全の必要性を欠くものではない。
1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が当該登記請求権を被保全権利として当該土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合における保全の必要性の有無
民事保全法23条1項、民事保全法53条1項
判旨
1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を保全するため、土地全部への処分禁止仮処分を申し立てることは、分筆登記申請が困難であるなどの特段の事情がある場合には、直ちに保全の必要性を欠くものではない。
問題の所在(論点)
1筆の土地の一部分の所有権移転登記請求権を被保全権利として、当該土地全部について処分禁止の仮処分を申し立てることは、民事保全法13条1項の「保全の必要性」を満たすか。
規範
1筆の土地の一部分の所有権移転登記請求権を被保全権利とする土地全部への処分禁止仮処分は、原則として当該一部分を超える部分につき保全の必要性を欠く。もっとも、債権者において分筆登記の申請をすることができない、または著しく困難であるなどの「特段の事情」が認められるときは、全部に対する仮処分であっても直ちに保全の必要性を欠くとはいえない。その際、債務者が一部分を超えて権利行使を制約される不利益の内容や程度を別途考慮し、過度な制約とならないことが必要である。
重要事実
債権者(抗告人)は、1筆の土地である本件各土地の一部を時効取得したと主張し、土地の登記名義人である債務者(相手方)に対し、所有権移転登記請求権を被保全権利として土地全部についての処分禁止仮処分を申し立てた。原審は、一部分の登記請求権であれば分筆登記の代位申請により保全可能であり、土地全部への仮処分は保全の必要性がないとして却下した。これに対し債権者は、登記官から分筆登記には地積測量図が必要であり、隣地所有者の立ち会い等が必要で申請が困難である旨の回答を得ていると主張して許可抗告した。
事件番号: 令和4(許)16 / 裁判年月日: 令和5年2月1日 / 結論: 棄却
破産管財人が、別除権の目的である不動産の受戻しについて上記別除権を有する者との間で交渉し、又は、上記不動産につき権利の放棄をする前後に上記の者に対してその旨を通知するに際し、上記の者に対して破産者を債務者とする上記別除権に係る担保権の被担保債権についての債務の承認をしたときは、その承認は上記被担保債権の消滅時効を中断す…
あてはめ
分筆登記の申請には地積測量図等の情報提供が必要であるが、密行性や迅速性が求められる保全手続において、債権者が客観的事情により当該情報の提供に障害を抱え、申請が著しく困難な場合があり得る。本件では、抗告人が登記官の回答を記載した報告書を提出しており、分筆登記申請に必要な事項を提供することの障害となる客観的事情の有無を検討すべきであった。このような特段の事情がある場合には、全部への仮処分も保全の必要性を肯定し得るため、審理を尽くさずに却下した原審の判断には法令違反がある。
結論
土地全部への処分禁止仮処分について、分筆登記申請が困難である等の特段の事情がある場合には、保全の必要性が認められ得る。原決定を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
一部分の登記請求について土地全部への仮処分を肯定した画期的な判断。実務上は、代位による分筆登記が物理的・手続的に困難であること(測量図の欠如や隣地立会拒絶等)を具体的に疎明することで、全部執行の道が開かれる。ただし、債務者の不利益との比較衡量も要件となる点に留意が必要。
事件番号: 平成27(許)15 / 裁判年月日: 平成28年3月18日 / 結論: 棄却
建物の区分所有等に関する法律59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として,民事保全法53条又は55条に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることはできない。
事件番号: 昭和25(ク)40 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が許されるのは、憲法違反を理由とする場合に限られる。単なる法令解釈の不当を憲法違反と主張することは、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、相手方の占有を解いて執行吏に保管させ、現状変更を禁止する仮処分決定を得ていた。その後、相手方が現状を変更したことを理由に…
事件番号: 昭和24(ク)30 / 裁判年月日: 昭和24年6月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法上特に最高裁判所に申し立てることが許された場合を除き、申し立てることはできない。 第1 事案の概要:抗告人が、特定の訴訟法上の規定の根拠がないままに、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):訴訟法上に特別の規定がない場合に、最高裁判…
事件番号: 平成14(許)23 / 裁判年月日: 平成15年1月31日 / 結論: 破棄自判
特定の目的物について既に仮差押命令を得た債権者は,これと異なる目的物について更に仮差押えをしなければ,金銭債権の完全な弁済を受けるに足りる強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき,又はその強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときには,既に発せられた仮差押命令と同一の被保全債権に基づき,異なる目的物に…