特定の目的物について既に仮差押命令を得た債権者は,これと異なる目的物について更に仮差押えをしなければ,金銭債権の完全な弁済を受けるに足りる強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき,又はその強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときには,既に発せられた仮差押命令と同一の被保全債権に基づき,異なる目的物に対し,更に仮差押命令の申立てをすることができる。 (補足意見がある。)
既に発せられた仮差押命令と同一の被保全債権に基づき異なる目的物に対し更に仮差押命令の申立てをすることの許否
民事保全法13条,民事保全法20条,民事保全法21条
判旨
同一の被保全債権につき、既に特定の目的物に対し仮差押命令を得ている場合であっても、異なる目的物に対し仮差押えをしなければ完全な弁済を得るに足りる強制執行が困難であるときは、重ねて仮差押命令を申し立てることができる。この場合、一事不再理の原則には反せず、権利保護の利益も認められる。
問題の所在(論点)
同一の被保全債権に基づき、既に発せられた仮差押命令の対象とは異なる目的物を対象として重ねて仮差押命令の申立てをすることの可否(権利保護の利益の有無)。
規範
仮差押命令の申立てにおいては、被保全債権及び目的物ごとの「仮差押命令の必要性」(民事保全法20条1項等)が審理の対象となる。既に特定の目的物について仮差押命令を得た債権者であっても、異なる目的物を更に保全しなければ金銭債権の完全な弁済を受けるに足りる強制執行が困難であると認められるときは、既発の命令とは別の「必要性」が存在する。したがって、同一の被保全債権に基づき異なる目的物に対し重ねて仮差押命令を申し立てることは、権利保護の要件を欠くものではなく許容される。
重要事実
抗告人は、連帯保証債務履行請求権を被保全債権として、相手方所有の土地(目録3)及び建物(目録4)に対し仮差押命令を得て執行した。その後、抗告人は同一の債権を被保全債権として、相手方の別の土地(目録2)に対し本件仮差押命令の申立てを行った。原審は、同一の被保全債権に基づく申立ては広い意味での一事不再理の原則に反し、権利保護の要件を欠くとして却下したため、抗告人が許可抗告した。
事件番号: 平成22(許)43 / 裁判年月日: 平成23年2月9日 / 結論: 破棄自判
権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を有する債権者が,当該社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産に対して仮差押えをする場合において,上記不動産につき,当該社団のために第三者がその登記名義人とされているときは,上記債権者は,仮差押命令の申立書に,上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属する事実を証する書面を添付し…
あてはめ
仮差押制度は本案の権利に基づく強制執行を保全するものである(民事保全法1条)。本件において、既に目録3の土地等に仮差押命令が発せられているが、本件申立てに係る目録2の土地を更に保全しなければ、3000万円の債権全額の弁済を受けるに足りる強制執行が困難になるおそれがあるならば、それは先行する仮差押命令とは別個の保全の必要性があるといえる。裁判所が無用な判断をすることにはならず、解放金制度(同法22条1項)を適切に運用すれば債務者に過剰な負担を強いることもないため、一事不再理には抵触しない。
結論
同一の被保全債権に基づき、異なる目的物に対して更になされる仮差押命令の申立ては、保全の必要性が認められる限り許される。原決定を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
同一目的物に対する再度の申立ては一事不再理により制限されるが、別目的物であれば「保全の必要性」が個別化される点に本旨がある。実務上は過剰差押えの禁止(民事執行法128条の類推等)との調整が問題となるが、本判例は入口としての申立ての適法性を肯定した。答案では、保全の必要性を目的物ごとに個別判断すべき文脈で活用する。
事件番号: 令和5(許)9 / 裁判年月日: 令和5年10月6日 / 結論: 破棄差戻
1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が当該登記請求権を被保全権利として当該土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合に、当該債権者において当該一部分について分筆の登記の申請をすることができない又は著しく困難であるなどの特段の事情が認められるときは、当該仮処分命令は、当該土地の全部…
事件番号: 平成23(許)34 / 裁判年月日: 平成23年9月20日 / 結論: 棄却
1 債権差押命令の申立てにおける差押債権の特定は,債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,直ちにとはいえないまでも,差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別することができるものであることを要する。 2 大規模な金融機関の全ての店舗又…
事件番号: 平成27(許)15 / 裁判年月日: 平成28年3月18日 / 結論: 棄却
建物の区分所有等に関する法律59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として,民事保全法53条又は55条に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることはできない。
事件番号: 昭和23(ク)23 / 裁判年月日: 昭和23年9月1日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告は、訴訟法等により特にその権限に属すると定められた場合を除き、直接申し立てることはできない。 第1 事案の概要:抗告人が、訴訟上の手続(判決文からは具体的な事件の内容は不明)に関し、最高裁判所に対して直接抗告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):訴訟法等に特別の規定…