憲法53条後段の規定により国会の臨時会の召集を決定することの要求をした国会議員は、内閣による上記の決定の遅滞を理由として、国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできない。 (反対意見がある。)
憲法53条後段の規定により国会の臨時会の召集を決定することの要求をした国会議員は内閣による上記の決定の遅滞を理由として国家賠償請求をすることができるか
憲法53条後段、国家賠償法1条1項
判旨
憲法53条後段に基づく臨時会召集決定の遅滞に関し、将来の召集義務等の確認を求める訴えは法律上の争訟に当たるが確認の利益を欠き、また、同条は個々の国会議員の権利利益を保障するものではないため国家賠償請求は認められない。
問題の所在(論点)
1. 憲法53条後段に基づく召集義務等の確認を求める訴えは「法律上の争訟」に当たるか、また確認の利益が認められるか。 2. 憲法53条後段の召集義務遅滞を理由として、個々の国会議員が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を請求できるか(同条が個々の議員の権利利益を保護しているか)。
規範
1. 公法上の法律関係に関する確認の訴えは、当事者間の具体的な権利義務又は法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用により終局的に解決できるものは「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に当たる。ただし、将来の不利益防止を目的とする場合、不利益が生ずる現実の危険が認められなければ確認の利益を欠く。 2. 憲法53条後段は、国会と内閣の権限分配の観点から、少数派議員に召集要求権を付与し内閣に召集決定義務を負わせたものであり、個々の国会議員自身の権利又は利益を保障したものとは解されない。したがって、同条に基づく召集決定の遅滞は、直ちに個々の議員の権利利益の侵害を構成しない。
重要事実
衆議院及び参議院の総議員の4分の1以上の議員(上告人を含む)が、憲法53条後段に基づき臨時会の召集を要求した。内閣は要求から92日後に召集を決定したが、召集された臨時会の冒頭で衆議院が解散された。上告人は、①将来同様の要求をした場合に内閣が20日以内に召集決定を行う義務等の確認(本件各確認の訴え)と、②召集遅滞により議員活動の権利を侵害されたとする国家賠償請求を行った。
あてはめ
1. 確認の訴えについて:上告人は個々の議員の権利という解釈を前提に法的義務の確認を求めており、法令適用による解決が可能なため「法律上の争訟」には当たる。しかし、将来再び要求がなされるか、その際に遅滞が生じるかは現時点で不明であり、不利益の現実の危険があるとはいえず確認の利益を欠く。 2. 国家賠償請求について:憲法53条後段の趣旨は、国会による国政権能の行使を可能にするための機関間の権限配分にある。召集後の活動権能は要求者か否かで差異はなく、同条が個々の議員に対し、召集後の活動を保障する目的で権利を付与したとは解されない。よって、召集遅滞があっても直ちに個々の議員の権利利益が侵害されたとはいえない。
結論
1. 本件各確認の訴えは、確認の利益を欠くため不適法として却下。 2. 本件損害賠償請求は、個人の権利侵害が認められないため棄却。
実務上の射程
憲法53条後段が「法的義務」を創設することを認めつつも、その反射的利益としての議員活動権を否定し、国賠法上の「法律上保護される利益」を極めて限定的に捉えた点に特徴がある。また、機関訴訟的な側面を持つ紛争でも、構成員の具体的権利の主張という形をとれば「法律上の争訟」性は肯定されるが、「確認の利益」のハードルは依然として高いことを示している。
事件番号: 令和5(オ)1341 / 裁判年月日: 令和6年7月3日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】旧優生保護法に基づく強制不妊手術による国家賠償請求権について、除斥期間(改正前民法724条後段)の経過による消滅を認めることが著しく正義・公平の理念に反し到底容認できない場合には、裁判所は、同条に基づく主張を信義則違反または権利濫用として拒絶できる。 第1 事案の概要:上告人らは旧優生保護法に基づ…