勾留理由の開示に対する特別抗告申立ての適否
刑訴法83条、刑訴法84条、刑訴法433条1項
判旨
勾留理由の開示は、裁判官が公開の法廷で勾留の理由を告げる事実にすぎず、刑訴法433条1項の「決定又は命令」に当たらない。したがって、開示された勾留理由の内容に不服がある場合でも、特別抗告を申し立てることはできない。
問題の所在(論点)
勾留理由開示期日において裁判官が告知した「勾留理由」そのものが、刑事訴訟法433条1項に規定される「決定又は命令」に該当し、特別抗告の対象となるか。
規範
刑事訴訟法433条1項の特別抗告の対象となる「決定又は命令」とは、裁判所または裁判官が行う裁判を指す。勾留理由の開示(憲法34条、刑訴法82条以下)は、公開の法廷において裁判官が勾留の理由を告知する行為であり、それ自体は裁判の告知ではなく、事後的・説明的性質を有する手続であるため、不服申立の対象となる「決定又は命令」には該当しない。
重要事実
特別抗告人は、裁判官が行った勾留理由開示期日における告知内容に不服があるとして、刑訴法433条1項に基づき最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた。なお、当該勾留自体の適法性については別途争われている可能性があるが、本件判決文からは詳細は不明である。
あてはめ
本件における不服の対象は、裁判官が勾留理由開示期日にて告知した内容そのものである。しかし、勾留理由の開示は、既に発せられた勾留という裁判の理由を公開の法廷で事後的に説明する行為である。これは、特定の法的効果を発生させる裁判(決定・命令)そのものではないため、同条にいう「決定又は命令」には当たらないといえる。したがって、告知された内容に不服があっても、特別抗告の手続によりその当否を争うことは許されない。
事件番号: 平成5(し)64 / 裁判年月日: 平成5年7月19日 / 結論: 棄却
勾留理由開示の手続においてされる裁判官の行為は、刑訴法四二九条一項二号にいう勾留に関する裁判には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である
結論
勾留理由の開示は「決定又は命令」に当たらないため、これに対する特別抗告は不適法であり、棄却されるべきである。
実務上の射程
勾留理由開示手続そのものに対する不服申立の可否を否定した重要な先例である。答案上では、裁判官の行為が「裁判」に該当するか否かの文脈で引用する。なお、勾留の裁判自体の違憲・違法を争う場合は、準抗告(429条1項2号)や特別抗告(433条1項)を「勾留決定」に対して行うべきであり、開示手続を対象とすべきではないことを峻別する必要がある。
事件番号: 昭和46(し)44 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
裁判官が勾留理由開示の請求を却下した裁判に不服がある者は、刑訴法四二九条一項二号により、その取消または変更を請求することができる。
事件番号: 昭和46(し)45 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留理由開示の請求を却下した裁判官の裁判に対しては、刑事訴訟法429条1項2号により準抗告の申立てが可能である。 第1 事案の概要:本件において、請求人は裁判官による勾留理由開示請求の却下裁判に対し、最高裁判所へ特別抗告(刑訴法433条)を申し立てた。当該申立てが適法であるか、すなわち、同裁判が「…
事件番号: 昭和31(し)61 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
勾留理由開示の請求を却下する決定で高裁がしたものに対しては、たとい判決後にしたものであつても、刑訴四二八条二項により、その高等裁判所に通常の抗告に代る異議の申立をすることができるのである。従つて原判決は同四三三条にいう「この法律により不服を申立てることができない決定」にあたらないから、これに対し同条所定の特別抗告を申立…
事件番号: 令和6(し)262 / 裁判年月日: 令和6年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の際の被疑事件告知において、個人特定事項を秘匿する方法(刑訴法207条の2第2項)によったとしても、他の事項から事件を特定可能であれば、憲法34条に違反しない。 第1 事案の概要:被疑者を勾留するに当たり、裁判官が刑訴法207条の2第2項の規定を適用し、被害者等の個人特定事項を伏せた状態で被疑…