裁判官が勾留理由開示の請求を却下した裁判に不服がある者は、刑訴法四二九条一項二号により、その取消または変更を請求することができる。
裁判官のした勾留理由開示請求却下の裁判に対する不服申立
刑訴法429条1項2号,刑訴法82条2項,刑訴法86条
判旨
裁判官が勾留理由開示の請求を却下した裁判に対し、不服がある者は刑事訴訟法429条1項2号により準抗告の申立てをすることができる。したがって、当該却下裁判は同法433条にいう「不服を申し立てることができない」裁判にはあたらない。
問題の所在(論点)
裁判官による勾留理由開示請求の却下裁判に対し、刑事訴訟法429条1項2号に基づく準抗告を申し立てることができるか。また、これにより同法433条の特別抗告の適格が否定されるか。
規範
裁判官がした「勾留に関する裁判」(刑訴法429条1項2号)には、勾留理由開示請求に対する却下決定も含まれると解すべきである。したがって、これに対する不服申立ては準抗告(同条1項)によるべきであり、準抗告が認められる以上、特別抗告(同法433条)の対象となる「不服を申し立てることができない裁判」には該当しない。
重要事実
本件において、裁判官が勾留理由開示の請求を却下する裁判を行った。これに対し、不服を有する者が最高裁判所に対して特別抗告(刑訴法433条)を申し立てた。当該申立てが適法か、すなわち勾留理由開示の却下裁判が「不服を申し立てることができない」裁判であるかが争点となった。
事件番号: 昭和46(し)45 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留理由開示の請求を却下した裁判官の裁判に対しては、刑事訴訟法429条1項2号により準抗告の申立てが可能である。 第1 事案の概要:本件において、請求人は裁判官による勾留理由開示請求の却下裁判に対し、最高裁判所へ特別抗告(刑訴法433条)を申し立てた。当該申立てが適法であるか、すなわち、同裁判が「…
あてはめ
勾留理由開示は、憲法34条に基づき勾留の理由を被疑者に示す手続であり、その請求を却下する裁判は実質的に「勾留に関する裁判」としての性質を有する。そのため、刑訴法429条1項2号を適用し、裁判所に対してその取消しまたは変更を請求する準抗告の申立てを認めるのが妥当である。本件では、準抗告という不服申立手段が別に存在する以上、刑訴法433条が規定する「不服を申し立てることができない」裁判にはあたらないと評価される。
結論
本件抗告は、準抗告により不服申立てが可能な裁判に対してなされたものであるから、刑訴法433条の要件を満たさず不適法として棄却される。
実務上の射程
勾留理由開示請求却下に対する救済手段を準抗告と明示した点に意義がある。答案上は、理由開示手続における裁判官の決定に対する不服申立ての可否が問われた際、刑訴法429条1項2号の「勾留に関する裁判」の解釈として本判例を引用し、準抗告を選択すべきことを論ずる。
事件番号: 昭和31(し)61 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
勾留理由開示の請求を却下する決定で高裁がしたものに対しては、たとい判決後にしたものであつても、刑訴四二八条二項により、その高等裁判所に通常の抗告に代る異議の申立をすることができるのである。従つて原判決は同四三三条にいう「この法律により不服を申立てることができない決定」にあたらないから、これに対し同条所定の特別抗告を申立…
事件番号: 平成5(し)64 / 裁判年月日: 平成5年7月19日 / 結論: 棄却
勾留理由開示の手続においてされる裁判官の行為は、刑訴法四二九条一項二号にいう勾留に関する裁判には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である
事件番号: 昭和60(し)139 / 裁判年月日: 昭和60年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がした勾留理由開示請求を却下する決定に対しては、刑事訴訟法上、不服申し立てをすることが認められておらず、特別抗告は不適法である。 第1 事案の概要:詐欺被告事件により勾留されていた被告人が、最高裁判所第二小法廷に対し勾留理由開示請求を行った。これに対し、最高裁判所は昭和60年11月29日…
事件番号: 昭和36(し)59 / 裁判年月日: 昭和36年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件最高裁決定は、下級審の判断が引用された判例とは事案を異にするものであるとして、判例違反を理由とする特別抗告を棄却したものである。 第1 事案の概要:本件は、特別抗告人が高等裁判所の判例違反を主張して特別抗告を申し立てた事案である。しかし、抗告理由の中で引用された各高等裁判所の判例は、本件の具体…