勾留理由開示の請求を却下する決定で高裁がしたものに対しては、たとい判決後にしたものであつても、刑訴四二八条二項により、その高等裁判所に通常の抗告に代る異議の申立をすることができるのである。従つて原判決は同四三三条にいう「この法律により不服を申立てることができない決定」にあたらないから、これに対し同条所定の特別抗告を申立てることはできない。
高等裁判所がした勾留理由開示の請求却下決定に対し特別抗告の申立ができるか
刑訴法428条2項,刑訴法433条,刑訴規則81条の2
判旨
高等裁判所がした勾留理由開示請求を却下する決定に対しては、判決後であっても刑事訴訟法428条2項に基づき異議の申立てが可能であるため、同法433条の特別抗告を申し立てることはできない。
問題の所在(論点)
高等裁判所が判決後にした勾留理由開示請求却下決定に対し、刑事訴訟法433条所定の特別抗告を申し立てることができるか。具体的には、当該決定が「法律により不服を申し立てることができない決定」に該当するかが争点となった。
規範
刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」とは、通常の抗告(419条、420条)及び異議の申立て(428条2項)のいずれも許されない決定を指す。高等裁判所がした決定については、同法428条2項により、その高等裁判所に対して通常の抗告に代わる異議の申立てをすることができるため、原則として特別抗告の対象とはならない。
重要事実
被告人に対し、高等裁判所が勾留理由開示の請求を却下する決定を行った。この決定は判決後になされたものであったが、これに不服があるとして、最高裁判所に対し抗告(特別抗告)が申し立てられた。判決後の決定という特殊な状況下において、同法428条2項の異議申立ての可否と、それに伴う433条1項の不服申立制度の適用関係が問題となった。
事件番号: 昭和46(し)44 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
裁判官が勾留理由開示の請求を却下した裁判に不服がある者は、刑訴法四二九条一項二号により、その取消または変更を請求することができる。
あてはめ
刑事訴訟法428条2項は、高等裁判所の決定に対し、通常の抗告に代わる不服申立手段として異議の申立てを認めている。この規定は決定が判決後になされた場合であっても排除されない。本件の勾留理由開示請求却下決定は高等裁判所によるものであるから、同条項により当該高等裁判所への異議申立てが可能である。したがって、本件決定は「不服を申し立てることができない決定」には当たらないと解される。
結論
本件抗告は、刑事訴訟法433条所定の要件を満たさない不適法なものであり、棄却されるべきである。
実務上の射程
高等裁判所の決定に対する不服申立の構造を明らかにした。高裁決定については、まず428条2項の異議申立ての成否を検討すべきであり、その手段が存在する限り、最高裁への特別抗告は排斥されるという実務上の原則を確認するものである。
事件番号: 昭和60(し)139 / 裁判年月日: 昭和60年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がした勾留理由開示請求を却下する決定に対しては、刑事訴訟法上、不服申し立てをすることが認められておらず、特別抗告は不適法である。 第1 事案の概要:詐欺被告事件により勾留されていた被告人が、最高裁判所第二小法廷に対し勾留理由開示請求を行った。これに対し、最高裁判所は昭和60年11月29日…
事件番号: 昭和46(し)45 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留理由開示の請求を却下した裁判官の裁判に対しては、刑事訴訟法429条1項2号により準抗告の申立てが可能である。 第1 事案の概要:本件において、請求人は裁判官による勾留理由開示請求の却下裁判に対し、最高裁判所へ特別抗告(刑訴法433条)を申し立てた。当該申立てが適法であるか、すなわち、同裁判が「…
事件番号: 昭和28(し)91 / 裁判年月日: 昭和28年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がした保釈却下の決定は、刑事訴訟法428条2項3号により異議の申立てが可能であるため、同法433条1項の「不服を申し立てることができない決定」に該当せず、最高裁判所への特別抗告は許されない。 第1 事案の概要:高等裁判所が保釈却下の決定(昭和28年10月3日付)を行ったのに対し、不服申立…
事件番号: 昭和30(し)45 / 裁判年月日: 昭和30年10月29日 / 結論: 棄却
本件証拠請求却下の決定のように訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑訴四三三条一項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当らない(昭和二九年(し)第三七号、同年一〇月八日第三小法廷決定、集第八巻一〇号一五八八頁)。