勾留理由開示の手続においてされる裁判官の行為は、刑訴法四二九条一項二号にいう勾留に関する裁判には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である
勾留理由開示の手続においてされる裁判官の行為に対する準抗告申立ての適否
刑訴法83条,刑訴法84条,刑訴法429条2号
判旨
勾留理由開示の手続において裁判官がした行為は、刑事訴訟法429条1項2号にいう「勾留に関する裁判」には当たらない。したがって、勾留理由開示の手続における違法を理由として準抗告を申し立てることはできない。
問題の所在(論点)
勾留理由開示の手続において裁判官が行う告知等の行為が、刑事訴訟法429条1項2号に規定される「勾留に関する裁判」に該当し、準抗告の対象となるか。
規範
刑事訴訟法429条1項2号にいう「勾留に関する裁判」とは、勾留の可否や延長等、身体拘束の当否そのものを判断する裁判を指す。勾留理由の開示は、公開の法廷で裁判官が勾留の理由を告げる手続(憲法34条前段、刑訴法82条以下)であり、その過程で行われる裁判官の諸行為は、勾留の当否を判断する裁判そのものとは区別されるべきである。
重要事実
被告人は公訴提起後、第1回公判期日前に行われた勾留理由開示手続において、弁護人が選任されていないにもかかわらず裁判官が開廷し、勾留の理由を告知した。被告人は、この告知行為に違法があるとして、刑訴法429条1項2号に基づき準抗告を申し立てたが、原審で不適法として棄却されたため、最高裁判所に抗告した。
事件番号: 平成17(し)406 / 裁判年月日: 平成17年10月24日 / 結論: 棄却
公訴提起後第1回公判期日前に弁護人が申請した起訴前の勾留理由開示の期日調書の謄写について裁判官が刑訴法40条1項に準じて行った不許可処分に対しては,同法429条1項2号による準抗告を申し立てることはできず,同法309条2項により異議を申し立てることができる。
あてはめ
本件における裁判官の行為は、公開の法廷において被告人に対し勾留の理由を告げるという、手続的な告知行為にとどまるものである。これは身体拘束の根拠となる「勾留」自体の当否を決定する裁判ではなく、憲法上の要請に基づく情報の開示手続に過ぎない。したがって、当該告知行為は「勾留に関する裁判」という法的概念には包含されないと解される。
結論
勾留理由開示における裁判官の行為は刑訴法429条1項2号の「勾留に関する裁判」に当たらないため、本件準抗告の申立ては不適法であり、抗告は棄却される。
実務上の射程
準抗告の対象(刑訴法429条1項各号)は限定的である。判例は本件のほか、保釈に関する裁判や接見禁止に関する裁判を対象とする一方、勾留理由開示や証拠保全の手続については、裁判官の行為であっても「裁判」に当たらないとして対象外とする傾向にある。答案上は、不服申立手段の適否を検討する際、対象となる行為が「裁判」の性質を有するかを判断する基準として活用できる。
事件番号: 令和5(し)270 / 裁判年月日: 令和5年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留理由の開示は、裁判官が公開の法廷で勾留の理由を告げる事実にすぎず、刑訴法433条1項の「決定又は命令」に当たらない。したがって、開示された勾留理由の内容に不服がある場合でも、特別抗告を申し立てることはできない。 第1 事案の概要:特別抗告人は、裁判官が行った勾留理由開示期日における告知内容に不…
事件番号: 昭和46(し)44 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
裁判官が勾留理由開示の請求を却下した裁判に不服がある者は、刑訴法四二九条一項二号により、その取消または変更を請求することができる。
事件番号: 昭和46(し)45 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留理由開示の請求を却下した裁判官の裁判に対しては、刑事訴訟法429条1項2号により準抗告の申立てが可能である。 第1 事案の概要:本件において、請求人は裁判官による勾留理由開示請求の却下裁判に対し、最高裁判所へ特別抗告(刑訴法433条)を申し立てた。当該申立てが適法であるか、すなわち、同裁判が「…
事件番号: 昭和48(し)64 / 裁判年月日: 昭和48年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官による逮捕状の発付は、裁判所による裁判ではなく裁判官による「裁判外の処分」に当たるが、これに対する準抗告(刑訴法429条1項)等の不服申立の道は法上存しない。 第1 事案の概要:申立人は、賍物収受被疑事件において簡易裁判所裁判官が発付した逮捕状に対し、準抗告を申し立てた。これを受けた原審(地…