第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときは、上記支払によって民事執行法160条による上記転付命令の執行債権及び執行費用の弁済の効果が妨げられることはない。
第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときの上記転付命令の効力
民事執行法159条、民事執行法160条
判旨
金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた後、当該金銭債権に対する転付命令が第三債務者に送達された場合、その後に電子記録債権が支払われて金銭債権が消滅しても、民事執行法160条による執行債権弁済の擬制の効力は妨げられない。
問題の所在(論点)
差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権が先行して発生していた場合、転付命令の送達後に当該電子記録債権が支払われることによって、民事執行法160条による執行債権の弁済擬制の効果が否定されるか。
規範
転付命令が効力を生じた場合、転付命令に係る金銭債権が存在する限り、差押債権者が現実の満足を受けられなくとも、執行債権等は当該債権の券面額で転付命令の送達時に弁済されたものとみなされる(民事執行法160条)。第三債務者が差押命令送達前に債務者との間で支払のために電子記録債権を発生させていた場合、送達後に当該電子記録債権が支払われることで金銭債権は消滅するが、転付命令の送達時点では金銭債権は存在していたといえるため、同条による弁済の擬制の効果は妨げられない。
重要事実
事件番号: 平成13(許)30 / 裁判年月日: 平成14年6月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する執行抗告においては,被差押債権の不存在又は消滅を理由とすることはできない。
債権者(相手方)は、債務者(抗告人)に対し仮執行宣言付判決を債務名義として、抗告人の第三債務者(ひろせ)に対する売掛債権を差し押さえ、転付命令を得た。第三債務者は、差押命令送達前に本件売掛債権(本件被転付債権)の支払のために電子記録債権を発生させていた。転付命令の確定後、第三債務者は電子記録債権の支払を抗告人に対して行い、債権者には支払わなかった。債権者が、転付命令の執行債権額を控除せずに抗告人の別の債権を差し押さえた(本件差押命令)ため、抗告人は、前件転付命令により執行債権は消滅しており超過差押え(民執法146条2項)に当たるとして取消しを求めた。
あてはめ
本件では、転付命令が第三債務者に送達された時点で、本件被転付債権は存在していた。その後に電子記録債権の支払(本件支払)がなされたとしても、支払によって生じる金銭債権の遡及的な消滅を差押債権者に対抗できるにすぎない。転付命令送達時に債権が存在していた以上、民事執行法160条の要件を満たし、執行債権は券面額で弁済されたものとみなされる。したがって、本件支払によって弁済の擬制が妨げられる理由はない。
結論
本件支払が転付命令の送達後になされたのであれば、執行債権は消滅しており、本件差押命令は超過差押えとして違法となる可能性があるため、支払時期等を更に審理させるべく原決定を破棄し差し戻す。
実務上の射程
転付命令の独占的満足(代物弁済的性格)と、手形や電子記録債権による支払の抗弁との関係を整理した。実務上、債権者は転付命令により回収不能のリスクを負う反面、債務者は二重払いのリスクがない限り執行債権の消滅を主張できる。答案では、160条の弁済擬制の「送達時」における債権存在の判断基準として用いる。
事件番号: 平成18(許)13 / 裁判年月日: 平成18年9月11日 / 結論: 棄却
強制執行を受けた債務者が,その請求債権につき強制執行を行う権利の放棄又は不執行の合意があったことを主張して裁判所に強制執行の排除を求める場合には,執行抗告又は執行異議の方法によることはできず,請求異議の訴えによるべきである。
事件番号: 平成28(許)46 / 裁判年月日: 平成29年10月10日 / 結論: 破棄自判
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となる。
事件番号: 平成11(許)23 / 裁判年月日: 平成12年4月14日 / 結論: 破棄差戻
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
事件番号: 令和4(許)6 / 裁判年月日: 令和4年8月16日 / 結論: 棄却
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律98条の定める作業報奨金の支給を受ける権利に対して強制執行をすることはできない。