刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律98条の定める作業報奨金の支給を受ける権利に対して強制執行をすることはできない。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律98条の定める作業報奨金の支給を受ける権利に対する強制執行の可否
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律98条、民事執行法143条
判旨
受刑者の作業報奨金支給権は、改善更生および社会復帰という趣旨に鑑み、譲渡不能であり強制執行の対象にもならない。
問題の所在(論点)
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」)98条に基づく作業報奨金支給権が、民事執行法上の差押禁止債権(性質上の譲渡不能債権)に該当するか。
規範
刑事収容施設法98条に基づく作業報奨金の支給を受ける権利は、その性質上、他に譲渡することが許されず、強制執行の対象にもならない。これは、債権者が受刑者の犯した罪の被害者である場合であっても同様である。
重要事実
債権者(抗告人)が、受刑者である債務者の作業報奨金支給権に対し、債権差押命令の申立てを行った事案。原審は、当該権利が差押禁止債権に当たると判断し、申立てを却下したため、抗告人が許可抗告を申し立てた。
事件番号: 平成28(許)46 / 裁判年月日: 平成29年10月10日 / 結論: 破棄自判
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となる。
あてはめ
法98条は、作業報奨金の支給目的を、作業の奨励による勤労意欲の向上、および釈放後の当座の生活費確保等を通じた「受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰」にあると解している。受刑者以外の者がこれを受領したのでは上記目的を達することができないため、当該権利は受刑者本人に専属する性質を有する。被害者による強制執行であっても、法の目的を妨げる点では変わりがなく、例外を認めるべきではない。
結論
作業報奨金支給権に対する強制執行は認められないため、差押命令の申立てを却下した原審の判断は正当である。
実務上の射程
受刑者の有する債権の中でも、作業報奨金については一律に差押禁止(性質上の譲渡制限)が及ぶことを明言した。被害者による損害賠償請求権を債権とする場合であっても、公法上の更生目的が優先されるという実務上の指針を示すものである。
事件番号: 平成11(許)23 / 裁判年月日: 平成12年4月14日 / 結論: 破棄差戻
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
事件番号: 令和4(許)13 / 裁判年月日: 令和5年3月29日 / 結論: 破棄差戻
第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときは、上記支払によって民事執行法160条による上記転付命令の執行債権及び執行費用の弁済…
事件番号: 平成23(許)34 / 裁判年月日: 平成23年9月20日 / 結論: 棄却
1 債権差押命令の申立てにおける差押債権の特定は,債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,直ちにとはいえないまでも,差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別することができるものであることを要する。 2 大規模な金融機関の全ての店舗又…
事件番号: 平成13(許)30 / 裁判年月日: 平成14年6月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する執行抗告においては,被差押債権の不存在又は消滅を理由とすることはできない。