債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となる。
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が差押債権の取立てとして金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となるか
民事執行法155条1項,民事執行法155条2項,民法491条
判旨
金銭債権の差押えにおいて、便宜上、請求債権中の遅延損害金を申立日までの確定金額として記載したとしても、取立金の充当の場面では、申立日の翌日以降の遅延損害金も充当の対象となる。
問題の所在(論点)
債権差押命令の申立書において、遅延損害金を実務上の取扱いに従って申立日までの確定金額として記載した場合、取立金が申立日翌日以降の遅延損害金に充当されるか。これに関連して、充当対象から除外されるべきかが争点となる(民事執行法145条、民法489条等に関連)。
規範
金銭債権に対する強制執行における第三債務者の計算負担軽減という配慮(本件取扱い)の合理性は認めるべきであるが、債権者がこれに従うのはあくまで第三債務者の負担に配慮する限度での受け入れにすぎない。債権者は、差押債権の取立てに係る金員の充当の場面では、もはや第三債務者の負担に配慮する必要がない以上、当該金員が支払済みまでの遅延損害金に充当されることについて合理的期待を有していると解するのが相当である。
重要事実
債権者である抗告人は、元金及び支払済みまでの遅延損害金を内容とする債務名義に基づき、債権差押命令を申し立てた。その際、裁判所の実務上の取扱い(第三債務者の計算負担軽減のため、遅延損害金を申立日までの確定金額で記載させる運用)に従い、請求債権を「申立日までの遅延損害金」の額で記載した。抗告人はその後、差押債権の取立てとして請求債権相当額(本件取立金)の支払を受けた。抗告人は、本件取立金が申立日の翌日から各支払日までの遅延損害金にも充当された結果、元金が残存しているとして、再度差押命令を申し立てた。
事件番号: 令和4(許)13 / 裁判年月日: 令和5年3月29日 / 結論: 破棄差戻
第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときは、上記支払によって民事執行法160条による上記転付命令の執行債権及び執行費用の弁済…
あてはめ
抗告人は、裁判所の実務上の取扱いに従って、本来受け取ることができる「支払済みまでの遅延損害金」を、申立書上のみ申立日までの確定額に制限して記載したにすぎない。取立金の充当場面では、第三債務者に新たな計算負担を課すものではなく、債権者が有する「債務名義どおりの弁済(遅延損害金を含む)」への合理的期待を否定する理由はない。したがって、記載された確定金額にかかわらず、本件取立金は申立日の翌日以降の遅延損害金にも充当の対象となると評価される。
結論
本件取立金は申立日の翌日以降の遅延損害金にも充当される。したがって、これに基づき計算された残元金について再度差押命令を申し立てることは許容される。
実務上の射程
実務上の「申立日までの確定金額」の記載は、あくまで差押えの範囲や第三債務者の負担を限定するための手続上の制約にすぎない。実体法上の充当関係や、その後の残債務に基づく再度の執行を妨げるものではないことを明示した判例であり、執行実務における申立書記載の効果と実体債権の範囲を切り離して考える際の指針となる。
事件番号: 平成16(許)26 / 裁判年月日: 平成17年1月20日 / 結論: 棄却
定期金の給付を命ずる仮処分の執行で,仮処分命令の送達の日より後に支払期限が到来するものについては,民事保全法43条2項の期間は,当該定期金の支払期限から起算する。
事件番号: 平成18(許)13 / 裁判年月日: 平成18年9月11日 / 結論: 棄却
強制執行を受けた債務者が,その請求債権につき強制執行を行う権利の放棄又は不執行の合意があったことを主張して裁判所に強制執行の排除を求める場合には,執行抗告又は執行異議の方法によることはできず,請求異議の訴えによるべきである。
事件番号: 令和4(許)6 / 裁判年月日: 令和4年8月16日 / 結論: 棄却
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律98条の定める作業報奨金の支給を受ける権利に対して強制執行をすることはできない。
事件番号: 平成13(許)30 / 裁判年月日: 平成14年6月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する執行抗告においては,被差押債権の不存在又は消滅を理由とすることはできない。