離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において、裁判所が離婚請求を認容する判決をするに当たり、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、財産分与についての裁判をしないことは許されない。
離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことの許否
民法768条2項、民法768条3項、民法771条、人事訴訟法32条1項
判旨
離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合、裁判所が離婚を認めるに当たって、夫婦が協力して得た財産の一部につき財産分与の裁判をしないことは許されない。分与を求める財産の一部について事情があるとしても、全ての対象財産につき一括して財産分与の額及び方法を定めるべきである。
問題の所在(論点)
離婚請求に附帯して財産分与の申立てがなされた場合に、裁判所が「特段の事情」を理由に、分与を求められた財産の一部についてのみ裁判をしない(判断を留保する)ことが許されるか。
規範
民法768条3項及び人事訴訟法32条1項の規定は、離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合、当事者が婚姻中に協力して得たとして分与を求める財産の「全部」につき裁判がされることを予定している。財産分与の制度は実質的共有財産の清算等を目的とし、速やかな解決が求められるものである(民法768条2項但書)。また、附帯申立てを認めた人事訴訟法32条1項の趣旨は、手続の経済と当事者の便宜にある。したがって、財産の一部につき裁判をしないことを許容する規定はなく、その一部につき裁判をしないことは制度の趣旨にも反し、許されない。
重要事実
上告人(夫)と被上告人(妻)は、離婚請求に附帯して財産分与の申立てをした。分与対象財産には、双方が婚姻後に出資して設立した医療法人の持分が含まれていた。原審は、当該医療法人が上告人に対して多額の損害賠償請求訴訟を提起している等の事情を鑑み、現時点では寄与度や分与額を定めることが相当でない「特段の事情」があるとして、当該出資持分を除外した余の財産についてのみ財産分与の裁判をした。
事件番号: 平成14(受)505 / 裁判年月日: 平成16年6月3日 / 結論: 破棄差戻
1 離婚の訴えの原因である事実によって生じた損害賠償請求の反訴の提起及び離婚の訴えに附帯してする財産分与の申立てについては,控訴審においても,相手方の同意を要しない。 2 原審の口頭弁論の終結に至るまでに離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において,上訴審が,原審の判断のうち財産分与の申立てに係る部分について…
あてはめ
本件において、医療法人の持分は当事者が婚姻中に協力して得た財産に当たると原審も認めている。民法768条3項は、一切の事情を考慮して「分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法」を定めるよう規定しており、特定の財産につき判断を回避することを予定していない。原審が挙げた損害賠償訴訟の係属という事情は、分与額や割合を決定する際の一要素として考慮すべき事柄であって、判断自体を拒否する理由にはならない。したがって、一部の財産を切り離して裁判をしないことは、紛争の一回的解決を図る人事訴訟法の趣旨を損なうものである。
結論
離婚請求を認容する判決において、当事者が分与を求める財産の一部につき財産分与の裁判をしないことは許されない。原判決中、財産分与に関する部分は破棄を免れず、差し戻しを要する。
実務上の射程
財産分与の対象財産の中に、評価が困難なものや帰属に争いがあるものが含まれている場合でも、裁判所はそれらを切り離して離婚及び一部の分与のみを先行させることはできない。答案上は、人事訴訟における附帯処分の裁判の必要的性質を強調する文脈で使用する。
事件番号: 昭和63(オ)316 / 裁判年月日: 平成元年9月7日 / 結論: 破棄差戻
有責配偶者である夫(大正一五年四月生)からの離婚請求であつても、夫婦の別居期間が約一五年六か月に及び、その間の子が夫と同棲する女性に四歳時から実子同然に育てられて一九歳に達しており、妻(昭和九年三月生)は別居期間中夫所有名義のマンションに居住し、主に夫から支払われる婚姻費用によつて生活してきたものであり、しかも、妻が離…
事件番号: 昭和31(オ)371 / 裁判年月日: 昭和33年1月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】離婚原因となった事実に基づく損害賠償請求は、相手方だけでなく、その共同不法行為者である第三者に対する請求についても離婚の訴えと併合して提起できる。また、自己の父が妻と不倫関係にある場合に、夫がその事実を知りながら看過・加担した場合には、夫自身も共同不法行為責任を負い、かつ夫からの離婚請求は認められ…
事件番号: 昭和42(オ)1195 / 裁判年月日: 昭和44年2月20日 / 結論: 棄却
地方裁判所は、婚姻費用の分担およぴ扶養に関する審判事項を内容とする訴訟事件を、民訴法三〇条一項の規定により家庭裁判所に移送することはできない。
事件番号: 昭和63(オ)270 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: 棄却
裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができる。