判旨
離婚原因となった事実に基づく損害賠償請求は、相手方だけでなく、その共同不法行為者である第三者に対する請求についても離婚の訴えと併合して提起できる。また、自己の父が妻と不倫関係にある場合に、夫がその事実を知りながら看過・加担した場合には、夫自身も共同不法行為責任を負い、かつ夫からの離婚請求は認められない。
問題の所在(論点)
1. 離婚の訴えに、離婚の相手方以外の第三者(共同不法行為者)に対する損害賠償請求を併合できるか。 2. 自分の父親が妻と不倫を行っていることを知りながら放置していた夫に、共同不法行為責任が認められるか。 3. 夫の父が妻と不倫を行っていた事実は、夫からの離婚請求における「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められるか。
規範
旧人事訴訟法7条2項但書(現人事訴訟法17条1項)にいう「離婚の原因たる事実に因つて生じた損害賠償の請求」には、離婚の相手方に対するものだけでなく、離婚原因を構成する共同不法行為に関与した第三者に対する請求も含まれる。その趣旨は、人事訴訟と通常訴訟の併合による審理の錯綜遅延を防止しつつ、立証の便宜を図る点にある。
重要事実
夫(上告人A1)の父(上告人A2)が、夫の妻(被上告人)と不倫行為に及んだ。夫は、父と妻の不倫関係を以前から知っていたにもかかわらず、これを防止せず、結果として共同不法行為者としての責任を問われる状況にあった。夫は妻に対して離婚を請求したが、妻側からは夫およびその父に対する共同不法行為に基づく損害賠償請求が離婚の訴えに併合して提起された。
あてはめ
1. 本件損害賠償請求は夫と父の共同不法行為を原因としており、離婚原因そのものと密接に関係する。このような場合、第三者に対する請求であっても立証上の便宜があり、審理の遅延を来すおそれがないため、人事訴訟法上の併合請求として適法である。 2. 夫は、父と妻の不倫を早期に認識しながら、これを是認または加担していたと評価される事実関係がある以上、父との共同不法行為責任を免れない。 3. 父が自分の妻と不倫を行っているという異常な状況下において、その事実を知りつつ放置・加担していた夫が、自ら「婚姻を継続し難い」として離婚を請求することは、有責配偶者からの請求と同様、正当なものとして是認できない。
結論
1. 第三者に対する損害賠償請求の併合提起は適法である。 2. 夫は父と共に共同不法行為責任を負う。 3. 夫側からの離婚請求は認められない。
事件番号: 昭和63(オ)316 / 裁判年月日: 平成元年9月7日 / 結論: 破棄差戻
有責配偶者である夫(大正一五年四月生)からの離婚請求であつても、夫婦の別居期間が約一五年六か月に及び、その間の子が夫と同棲する女性に四歳時から実子同然に育てられて一九歳に達しており、妻(昭和九年三月生)は別居期間中夫所有名義のマンションに居住し、主に夫から支払われる婚姻費用によつて生活してきたものであり、しかも、妻が離…
実務上の射程
実務上、不貞相手に対する慰謝料請求を離婚訴訟に併合する際の根拠となる判例である。また、単なる不作為であっても、状況により配偶者の不倫について共同不法行為責任を肯定し得る点、および信義則上、そのような立場にある夫からの離婚請求を制限する点に意義がある。
事件番号: 平成21(受)332 / 裁判年月日: 平成23年3月18日 / 結論: その他
妻が,夫に対し,夫との間に法律上の親子関係はあるが,妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子につき,離婚後の監護費用の分担を求めることは,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,権利の濫用に当たる。 (1) 妻が,出産後程なく当該子と夫との間に自然的血縁関係がないことを知ったのに,そのことを夫に告げなかったた…
事件番号: 昭和25(オ)241 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
夫婦の一方が他方の不正行為を摘発してこれを罪におとすことは、その名誉もしくは面目を著しく毀損するものであつて、改正前の民法第八一三条第五号の重大なる侮辱にあたる。
事件番号: 令和3(受)1115 / 裁判年月日: 令和4年12月26日 / 結論: 破棄差戻
離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において、裁判所が離婚請求を認容する判決をするに当たり、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、財産分与についての裁判をしないことは許されない。
事件番号: 昭和63(オ)270 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: 棄却
裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができる。