妻が,夫に対し,夫との間に法律上の親子関係はあるが,妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子につき,離婚後の監護費用の分担を求めることは,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,権利の濫用に当たる。 (1) 妻が,出産後程なく当該子と夫との間に自然的血縁関係がないことを知ったのに,そのことを夫に告げなかったため,夫は,当該子との親子関係を否定する法的手段を失った。 (2) 夫は,婚姻中,相当に高額な生活費を妻に交付するなどして,当該子の養育・監護のための費用を十分に分担してきた。 (3) 離婚後の当該子の監護費用を専ら妻において分担することができないような事情はうかがわれない。
妻が,夫に対し,夫との間に法律上の親子関係はあるが,妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子につき,離婚後の監護費用の分担を求めることが,権利の濫用に当たるとされた事例
民法1条3項,民法766条1項,民法771条
判旨
法律上の親子関係がある場合でも、妻が他男との間の子であることを秘匿した結果、夫が嫡出否認等の法的手段を失った等の特段の事情があるときは、離婚後の養育費請求は権利の濫用として認められない。
問題の所在(論点)
法律上の親子関係が確定しており、かつ実親子関係が存在しない場合において、妻から夫に対する離婚後の養育費(監護費用)請求が権利の濫用に当たるか。
規範
民法上の親子関係が存在し、監護費用の分担義務が生じる場合であっても、分担を求めることが正義の観念に著しく反し、子の福祉を考慮してもなお容認できない特段の事情がある場合には、当該請求は権利の濫用(民法1条3項)として許されない。その判断にあたっては、血縁関係の存否、血縁の不在を隠蔽した態様、夫が法的手段を講じる機会を失った経緯、既往の分担状況、及び分担義務を負わせないことによる子の福祉への影響を総合考慮する。
重要事実
事件番号: 平成17(受)1793 / 裁判年月日: 平成19年3月30日 / 結論: その他
離婚の訴えにおいて,別居後単独で子の監護に当たっている当事者から他方の当事者に対し,別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払を求める旨の申立てがあった場合には,裁判所は,離婚請求を認容する際に,人事訴訟法32条1項所定の子の監護に関する処分を求める申立てとして,その当否について審理判断しなければならない。
上告人(夫)と被上告人(妻)の婚姻中、妻は他男と交際して二男を出産したが、血縁がないことを知りながら約7年間秘匿した。夫はこれを知らぬまま多額の生活費を支出し続け、事実を知った時には既に嫡出否認の出訴期間を徒過し、親子関係を否定する法的手段を失っていた。他方、夫は婚姻破綻後も高額な婚姻費用を支払っており、妻は離婚に際し約1270万円の財産分与を受ける予定であった。
あてはめ
妻は血縁がないことを知りながら秘匿し、夫から嫡出否認の機会を奪ったものであり、夫が将来にわたり関係のない子の監護費用を負担し続けることは過大な負担である。また、夫はこれまで十分な費用を分担してきた。加えて、妻は多額の財産分与を受けるため、妻のみに分担させたとしても直ちに子の福祉に反するとはいえない。これらの事情を総合すれば、本件請求は権利の濫用に当たる。
結論
被上告人(妻)による二男の監護費用分担の申立てを却下する。
実務上の射程
嫡出否認・親子関係不存在確認が不可能なケースにおける救済手段として機能する。ただし、子の福祉に反しないことが要件となるため、妻側の経済力や既往の扶養状況が厳しく問われる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和63(オ)270 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: 棄却
裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができる。
事件番号: 昭和63(オ)316 / 裁判年月日: 平成元年9月7日 / 結論: 破棄差戻
有責配偶者である夫(大正一五年四月生)からの離婚請求であつても、夫婦の別居期間が約一五年六か月に及び、その間の子が夫と同棲する女性に四歳時から実子同然に育てられて一九歳に達しており、妻(昭和九年三月生)は別居期間中夫所有名義のマンションに居住し、主に夫から支払われる婚姻費用によつて生活してきたものであり、しかも、妻が離…
事件番号: 昭和31(オ)371 / 裁判年月日: 昭和33年1月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】離婚原因となった事実に基づく損害賠償請求は、相手方だけでなく、その共同不法行為者である第三者に対する請求についても離婚の訴えと併合して提起できる。また、自己の父が妻と不倫関係にある場合に、夫がその事実を知りながら看過・加担した場合には、夫自身も共同不法行為責任を負い、かつ夫からの離婚請求は認められ…
事件番号: 昭和32(オ)529 / 裁判年月日: 昭和34年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の離婚において、裁判所は、父母のいずれか一方を親権者と定めるにあたり、当事者(親権者として定められる側)からの申立を必要としない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の離婚をめぐる訴訟において、原審が上告人を親権者と定めたことに対し、上告人が「自分は親権者となる申立をしていないにもかかわらず…