離婚の訴えにおいて,別居後単独で子の監護に当たっている当事者から他方の当事者に対し,別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払を求める旨の申立てがあった場合には,裁判所は,離婚請求を認容する際に,人事訴訟法32条1項所定の子の監護に関する処分を求める申立てとして,その当否について審理判断しなければならない。
離婚の訴えにおける別居後離婚までの間の子の監護費用の支払を求める旨の申立てと裁判所の審理判断の要否
人事訴訟法32条1項,民法766条1項,民法771条
判旨
離婚の訴えにおいて、別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払を求める申立ては、民法766条1項等の類推適用により、人事訴訟法32条1項所定の子の監護に関する処分を求める附帯申立てとして適法である。したがって、裁判所は離婚請求を認容する際、当該期間の監護費用についても審理判断しなければならない。
問題の所在(論点)
離婚訴訟において、離婚成立「前」の別居期間中に発生した子の監護費用(婚姻費用のうち子の養育費相当分)の分担を、人事訴訟法32条1項に基づく附帯処分として申し立てることは可能か。
規範
離婚の訴えにおいて、別居後単独で子の監護に当たっている当事者から他方の当事者に対し、別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払を求める旨の申立てがあった場合には、民法771条、766条1項を類推適用すべきである。かかる申立ては、人事訴訟法32条1項所定の「子の監護に関する処分」を求める申立てとして適法なものと解される。
重要事実
上告人(妻)と被上告人(夫)は婚姻したが、妻が長男を出産した直後から別居状態となった。妻は長男を単独で監護し、離婚訴訟の本訴において離婚請求とともに、別居後から長男が成年に達するまでの間の監護費用(養育費)の分担を申し立てた。第一審は離婚を認め、別居期間中を含む未払監護費用の支払を命じたが、原審(控訴審)は、離婚の効力が生じるまでの間の監護費用については離婚の訴えに附帯して申し立てることはできないとして、不適法却下した。
事件番号: 昭和63(オ)270 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: 棄却
裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができる。
あてはめ
民法766条1項は離婚後の子の監護について定めるが、離婚訴訟に伴い、離婚までの別居期間における監護費用の精算を求めるニーズは強い。本件では、妻が長男を単独で監護している実態があり、離婚請求と併せて過去の監護費用の支払を求めている。これを人事訴訟法32条1項の「子の監護に関する処分」に当たると解さない場合、当事者は別途家庭裁判所に婚姻費用の分担申立て等を行う必要が生じ、紛争の一回的解決に反する。したがって、法理上は民法766条1項等を類推適用し、附帯処分として審理の対象とすべきといえる。本件申立てを不適法とした原審の判断には法令の違反がある。
結論
別居後離婚までの期間における監護費用の支払申立ては適法である。原審は不適法として却下した判断を破棄し、当該申立ての当否について審理させるため本件を差し戻す。
実務上の射程
婚姻費用分担請求のうち、子の監護費用(養育費相当分)に限定して離婚訴訟の附帯処分として扱えることを認めた射程の長い判例である。答案上は、人事訴訟における附帯処分の範囲を論じる際、民法766条1項の類推適用と紛争の一回的解決の観点から本判例を引用し、実務的な処理の正当性を基礎付ける際に用いる。
事件番号: 平成21(受)332 / 裁判年月日: 平成23年3月18日 / 結論: その他
妻が,夫に対し,夫との間に法律上の親子関係はあるが,妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子につき,離婚後の監護費用の分担を求めることは,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,権利の濫用に当たる。 (1) 妻が,出産後程なく当該子と夫との間に自然的血縁関係がないことを知ったのに,そのことを夫に告げなかったた…
事件番号: 昭和63(オ)316 / 裁判年月日: 平成元年9月7日 / 結論: 破棄差戻
有責配偶者である夫(大正一五年四月生)からの離婚請求であつても、夫婦の別居期間が約一五年六か月に及び、その間の子が夫と同棲する女性に四歳時から実子同然に育てられて一九歳に達しており、妻(昭和九年三月生)は別居期間中夫所有名義のマンションに居住し、主に夫から支払われる婚姻費用によつて生活してきたものであり、しかも、妻が離…
事件番号: 昭和42(オ)1195 / 裁判年月日: 昭和44年2月20日 / 結論: 棄却
地方裁判所は、婚姻費用の分担およぴ扶養に関する審判事項を内容とする訴訟事件を、民訴法三〇条一項の規定により家庭裁判所に移送することはできない。