地方裁判所は、婚姻費用の分担およぴ扶養に関する審判事項を内容とする訴訟事件を、民訴法三〇条一項の規定により家庭裁判所に移送することはできない。
婚姻費用の分担および扶養に関する審判事項を内容とする訴訟事件と家庭裁判所に対する移送の可否
民訴法30条1項,家事審判法9条1項乙類3号,家事審判法8号
判旨
婚姻費用分担額および扶養料分担額は、協議が調わないときは家庭裁判所が審判で定めるべき事項であり、通常裁判所が判決手続で判定することはできず、家事審判事件を管轄裁判所へ移送することも許されない。
問題の所在(論点)
婚姻費用の分担額や扶養料の分担額を、通常裁判所の判決手続(反訴等)によって請求することの可否。また、家事審判事項が訴訟として提起された場合に家庭裁判所等への移送が可能か。
規範
民法760条の婚姻費用分担および同法878条、879条の扶養料分担について関係当事者間に協議が調わない場合、これらは家事審判法(現行の家事事件手続法)の定めに基づき家庭裁判所が審判で定めるべき事項である。したがって、通常裁判所が判決手続で判定することは許されず、かつ家事審判事件として提起された訴訟を移送することも原則として認められない。
重要事実
上告人が、通常裁判所における訴訟手続の中で、婚姻費用の分担または扶養料の支払いを求める反訴を提起した事案。原審は、当該請求が家事審判法9条1項乙類(現行の別表第二)に該当する事項であり、判決手続によって判定すべきものではないとして、反訴を不適法却下した。
事件番号: 昭和43(オ)458 / 裁判年月日: 昭和43年9月20日 / 結論: 棄却
民法第七六〇条の規定による婚姻費用の分担額は、協議がととのわないかぎり、家庭裁判所が決定すべきであつて、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではない。
あてはめ
婚姻費用の分担額等の決定は、当事者の資産、収入その他一切の事情を考慮して家庭裁判所の合理的な裁量によって定めるべき家事審判事項である。本件の反訴請求は、まさにこの審判事項を内容とするものであるから、判決手続による審理の対象とはならない。また、家事審判事件が誤って訴訟事件として提起された場合であっても、民訴法30条1項(現行の民訴法16条1項)に基づく他の管轄裁判所への移送は、特別の規定がない限り許されないと解される。
結論
婚姻費用の分担および扶養料の反訴請求を不適法として却下した原審の判断は正当である。通常裁判所はこれらについて本案判決を下すことはできない。
実務上の射程
婚姻費用や扶養料の請求は、判決手続において附随的に解決することはできず、家庭裁判所への審判申し立てが必須となる。答案上、婚姻費用分担等の請求を「訴え」の形式で行っている場合は、訴えの適法性(裁判権・訴えの利益等)の文脈で、判決手続の対象外である点に触れる必要がある。
事件番号: 平成14(受)505 / 裁判年月日: 平成16年6月3日 / 結論: 破棄差戻
1 離婚の訴えの原因である事実によって生じた損害賠償請求の反訴の提起及び離婚の訴えに附帯してする財産分与の申立てについては,控訴審においても,相手方の同意を要しない。 2 原審の口頭弁論の終結に至るまでに離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において,上訴審が,原審の判断のうち財産分与の申立てに係る部分について…
事件番号: 昭和31(オ)524 / 裁判年月日: 昭和35年6月17日 / 結論: 棄却
妻が醜業に従事したことがあつても、原審認定のような事情(原判決理由参照)がある場合は、夫からのこれを理由とする離婚の請求は許されない。
事件番号: 昭和63(オ)270 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: 棄却
裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができる。
事件番号: 昭和63(オ)316 / 裁判年月日: 平成元年9月7日 / 結論: 破棄差戻
有責配偶者である夫(大正一五年四月生)からの離婚請求であつても、夫婦の別居期間が約一五年六か月に及び、その間の子が夫と同棲する女性に四歳時から実子同然に育てられて一九歳に達しており、妻(昭和九年三月生)は別居期間中夫所有名義のマンションに居住し、主に夫から支払われる婚姻費用によつて生活してきたものであり、しかも、妻が離…