裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができる。
離婚請求を認容するに際し親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合と監護費用の支払命令
人事訴訟手続法15条1項,民法766条1項,民法771条
判旨
離婚訴訟において裁判所は、子の監護をする当事者が親権者に指定されるか否かにかかわらず、申立てにより、他方の当事者に対して監護費用の支払を命じることができる。
問題の所在(論点)
離婚訴訟を審理する裁判所が、人事訴訟手続法15条1項(当時)に基づき、親権者の指定と並んで、子の監護費用の分担(養育費の支払)を命じることができるか。
規範
民法771条、766条1項は、親権者の指定の有無にかかわらず、父母の一方が子の監護に必要な費用を分担する等の事項を定めることを規定している。したがって、離婚訴訟を扱う裁判所は、離婚請求を認容する際、子の監護をする者を親権者に指定するか否かを問わず、申立てに基づき「子の監護に必要な事項」として監護費用の支払を命ずることが可能である。
重要事実
被上告人(妻)が、上告人(夫)に対し、離婚並びに二男の親権者の指定及び養育費の支払を求めて訴えを提起した。原審は、離婚請求を認容し、被上告人を親権者と定めるとともに、上告人に対して二男が成年に達するまでの養育費(監護費用)の支払を命じた。これに対し上告人が、離婚訴訟においてこのような給付を命じることの適法性を争い、上告した事案である。
事件番号: 平成17(受)1793 / 裁判年月日: 平成19年3月30日 / 結論: その他
離婚の訴えにおいて,別居後単独で子の監護に当たっている当事者から他方の当事者に対し,別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払を求める旨の申立てがあった場合には,裁判所は,離婚請求を認容する際に,人事訴訟法32条1項所定の子の監護に関する処分を求める申立てとして,その当否について審理判断しなければならない。
あてはめ
民法766条1項は、子の監護につき必要な事項は「子の利益」を最優先に決定すべきという趣旨を含んでいる。本件において、被上告人が二男を監護する状況にある以上、親権の帰属という法的地位の確定とは別に、実態としての監護に要する費用を上告人に負担させることは、子の利益を確保するために必要な事項に該当する。したがって、裁判所が離婚の判決において、親権者の指定と併せて監護費用の支払を命じた判断に違法はない。
結論
裁判所は、離婚請求を認容する際、親権者の指定にかかわらず、申立てにより監護費用の支払を他方の当事者に命じることができる。
実務上の射程
離婚に伴う子の監護費用の分担を、別個の審判手続によることなく、離婚訴訟の附帯処分として解決することを認めた実務上極めて重要な判決である。答案上は、人事訴訟法32条1項(現行法)に基づき、裁判所が職権(または申立て)で子の監護に関する処分をなしうる根拠として、本判例の論理を援用すべきである。
事件番号: 昭和63(オ)316 / 裁判年月日: 平成元年9月7日 / 結論: 破棄差戻
有責配偶者である夫(大正一五年四月生)からの離婚請求であつても、夫婦の別居期間が約一五年六か月に及び、その間の子が夫と同棲する女性に四歳時から実子同然に育てられて一九歳に達しており、妻(昭和九年三月生)は別居期間中夫所有名義のマンションに居住し、主に夫から支払われる婚姻費用によつて生活してきたものであり、しかも、妻が離…
事件番号: 平成21(受)332 / 裁判年月日: 平成23年3月18日 / 結論: その他
妻が,夫に対し,夫との間に法律上の親子関係はあるが,妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子につき,離婚後の監護費用の分担を求めることは,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,権利の濫用に当たる。 (1) 妻が,出産後程なく当該子と夫との間に自然的血縁関係がないことを知ったのに,そのことを夫に告げなかったた…
事件番号: 平成14(受)505 / 裁判年月日: 平成16年6月3日 / 結論: 破棄差戻
1 離婚の訴えの原因である事実によって生じた損害賠償請求の反訴の提起及び離婚の訴えに附帯してする財産分与の申立てについては,控訴審においても,相手方の同意を要しない。 2 原審の口頭弁論の終結に至るまでに離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において,上訴審が,原審の判断のうち財産分与の申立てに係る部分について…
事件番号: 昭和42(オ)1195 / 裁判年月日: 昭和44年2月20日 / 結論: 棄却
地方裁判所は、婚姻費用の分担およぴ扶養に関する審判事項を内容とする訴訟事件を、民訴法三〇条一項の規定により家庭裁判所に移送することはできない。