地方自治法255条の2第1項1号の規定による審査請求に対する裁決について、原処分をした執行機関の所属する行政主体である都道府県は、取消訴訟を提起する適格を有しない。
地方自治法255条の2第1項1号の規定による審査請求に対する裁決について、原処分をした執行機関の所属する行政主体である都道府県は、取消訴訟を提起する適格を有するか
行政不服審査法1条、行政不服審査法2条、行政不服審査法4条、行政不服審査法52条1項、地方自治法2条9項1号、地方自治法245条3号、地方自治法255条の2第1項1号、行政事件訴訟法9条1項
判旨
法定受託事務に係る知事等の処分について各大臣がした裁決に対し、処分庁の属する地方公共団体が取消訴訟を提起することは認められない。地方公共団体は、当該裁決の適法性を争う原告適格を有しない。
問題の所在(論点)
法定受託事務に係る都道府県知事等の処分につき、地方自治法255条の2第1項1号に基づき国務大臣がした裁決に対し、当該都道府県がその取消しを求める訴えを提起する原告適格(訴えの利益)を有するか。
規範
行政不服審査法による審査請求制度が、国民の権利利益の救済と行政の適正な運営を目的とし、裁決が関係行政庁を拘束すると定めていること、及び地方自治法255条の2第1項1号が法定受託事務の審査請求を各大臣の管轄とした趣旨(国の事務としての適正な処理の確保・全国的統一・公正な判断への期待保護)に照らし、法は、原処分をした執行機関の所属する行政主体である都道府県が抗告訴訟により裁決の適法性を争うことを認めていないと解すべきである。
重要事実
沖縄防衛局は、普天間飛行場の代替施設設置(辺野古埋立事業)のため、沖縄県知事から公有水面埋立法の承認を受けた。その後、沖縄県副知事が事情変更等を理由に本件承認を取り消した(本件承認取消し)。これに対し沖縄防衛局は、地方自治法255条の2第1項1号に基づき、所管の国土交通大臣に審査請求を行い、同大臣は本件承認取消しをさらに取り消す裁決(本件裁決)をした。沖縄県は、本件裁決を不服としてその取消訴訟を提起した。
事件番号: 昭和57(行ツ)149 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
公有水面埋立法(昭和四八年法律第八四号による改正前のもの)二条の埋立免許及び同法二二条の竣功認可の取消訴訟につき、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利を有するにすぎない者は、原告適格を有しない。
あてはめ
本件承認取消しに係る公有水面埋立事務は法定受託事務であり、国が本来果たすべき役割に係るものである。本件裁決は、行政不服審査法1条等の趣旨に基づき、処分の相手方の救済と行政の適正運営を確保するための最終的な判断である。また、地方自治法245条3号括弧書きが、裁決を国と地方公共団体との間の紛争処理手続の対象から除外している趣旨は、紛争の迅速な解決を図り相手方の地位を安定させる点にある。仮に都道府県による抗告訴訟を認めれば、この趣旨に反して紛争が長期化し、相手方の地位を不安定にする。さらに、現行法上に都道府県が裁決の適法性を争える旨の規定も存在しない。したがって、沖縄県は本件裁決の取消しを求める適格を欠く。
結論
本件裁決について、原処分をした執行機関の所属する行政主体である上告人(沖縄県)は、取消訴訟を提起することができない(訴えは却下されるべき)。
実務上の射程
法定受託事務における国と地方の紛争において、国務大臣による裁決が出た場合、地方公共団体は司法の場でその裁決自体を争うことはできないという枠組みを明示した。地方自治法上の紛争処理手続との調整を図る際や、行政主体間の訴訟(機関訴訟的側面)における原告適格を論じる際の有力な規範となる。
事件番号: 昭和25(オ)160 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
市町村農地委員会の定めた農地の買収計画、売渡計画に対する都道府県農地委員会の承認は、民訴応急措置法第八条、自作農創設特別措置法第四七条の二、同法附則第七条、行政事件訴訟特例法等にいう行政庁の処分ということはできない。
事件番号: 令和1(行ヒ)367 / 裁判年月日: 令和2年3月26日 / 結論: 棄却
公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認は,国の機関が行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」において相手方となるものということはできない。