判旨
行政庁相互間の行為にすぎず、国民の権利義務に直接関係しない行為については、行政訴訟の対象となる処分性を欠く。県農地委員会による市地区農地委員会の農地売渡計画承認の取消しは、当該農地の売渡を受けた者の権利義務に直接関係せず、訴訟を提起し得ない。
問題の所在(論点)
上級行政庁(県農地委員会)が下級行政庁(地区農地委員会)の決定に対して行った承認の取消しという行政庁相互間の行為が、当該土地の買受人という私人の権利義務に直接関係する「処分」に該当し、抗告訴訟の対象となるか。
規範
行政訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。行政庁相互間の内部的な行為に止まり、国民の権利義務に直接的な法的影響を及ぼさないものは、処分性を有しない。
重要事実
D県農地委員会は、七尾市E地区農地委員会が定めた農地売渡計画に対して与えていた承認を取り消す行為を行った。この計画に基づき、既に本件土地の売渡しを受けていた上告人は、当該取消行為を不服として訴えを提起した。
あてはめ
D県農地委員会による承認の取消しは、行政組織内部における上級機関から下級機関に対する意思決定の是正であり、行政庁相互間の行為に止まる。かかる行為は、行政内部のプロセスを規律するものであって、本件土地の売渡しを受けた上告人に対して、その権利義務を直接制限したり、新たな義務を課したりする法的効果を有するものではない。したがって、国民の権利義務に直接関係のある行為とはいえない。
結論
県農地委員会の承認取消行為は、上告人の権利義務に直接関係するものではないため、処分性を欠き、これに対する訴訟を提起することはできない。
実務上の射程
行政内部の監督権の行使や、多段階手続における中間的な行為の処分性を否定する文脈で参照される。特に「行政庁相互間の行為」が私人への直接的効果を伴わない場合の非処分性を判断する際の基礎的な先例となる。
事件番号: 昭和27(オ)87 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の賃貸借契約の解除につき、その適法性および正当性が認められない場合には、解除の効力は発生しない。 第1 事案の概要:上告人は、本件農地に関する賃貸借契約の解除を主張して争った。しかし、原審(控訴審)は、当該解除が適法かつ正当なものとは言えないと認定した。上告人はこれを不服として、原判決の認定に…
事件番号: 昭和25(オ)160 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
市町村農地委員会の定めた農地の買収計画、売渡計画に対する都道府県農地委員会の承認は、民訴応急措置法第八条、自作農創設特別措置法第四七条の二、同法附則第七条、行政事件訴訟特例法等にいう行政庁の処分ということはできない。