判決に当事者の主張の採用すべきものであるか否かに関する裁判所の意見がその理由とともに表明されている以上、それが正当であると否とに拘りなく、民訴法第四二〇条第一項九号所定の判断遺脱があるとはいえない。
判断遺脱の有無。
民訴法191条,民訴法420条1項9号
判旨
裁判所が当事者の主張に対し、その成否に関する意見を理由と共に判決に表明している以上、たとえその判断の内容に誤りがあったとしても、再審事由である「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したとき」には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判所が判決の理由中で当事者の主張について判断を示しているが、その判断内容に誤りがある場合に、民事訴訟法上の再審事由である「判断の遺脱」に該当するか。
規範
旧民事訴訟法420条1項9号(現行338条1項9号)にいう「判断を遺脱した」とは、当事者の主張に対して、採用すべきか否かに関する意見をその理由と共に表明しないことを指す。したがって、判決において意見および理由が表明されている限り、その判断の当不当を問わず、判断遺脱には該当しない。
重要事実
上告人は、農地所有権移転許可処分の取消請求(前訴)において、徳島地方裁判所が「訴願を経由していないため不適法である」と判断したことに対し、その判断に誤りがあるとして、再審事由としての判断遺脱(旧民訴法420条1項9号)を主張した。しかし、前訴判決には訴願不経由を理由とする不適法の旨が理由と共に明示されており、かつ前訴において上告人自身が訴願を経由していない事実を認めていた。
あてはめ
本件では、前訴裁判所は上告人の主張に対し、訴願不経由による訴えの不適法という意見を理由と共に判決に表明している。これは形式的に判断を示したものといえる。再審事由としての「判断遺脱」は、判断そのものが欠落していることを指すものであり、示された判断の内容が実体的に正当か否かは再審事由の存否に影響しない。さらに、上告人自身が前訴で訴願不経由の事実を認めていたことから、事実認定のプロセスにおいても瑕疵はない。
結論
判決において意見および理由が表明されている以上、その内容が誤りであっても判断遺脱には当たらず、再審の訴えは認められない。
実務上の射程
判決理由中で明示的に排斥された主張について、内容の誤りを理由に判断遺脱を主張することはできないことを確認した。判例上、判断遺脱は「主張された攻撃防御方法に対し、判決主文に影響を及ぼすべき判断を全く示さなかった場合」に限定される実務運用を支える一要素となる。
事件番号: 昭和27(オ)274 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和32(ヤ)17 / 裁判年月日: 昭和32年10月30日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱を理由とする場合であっても、原判決が当該点について必要な判断を示しているときは、適法な再審事由に当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所が下した確定判決に対し、上告理由として主張した諸点について判断を遺脱した違法があるとし…