一 訴願権者でない者の提起した訴願を不適法として却下する裁決は、行政事件訴訟特例法第五条第四項にいう訴願の裁決にあたらない。 二 農地売渡計画に対し異議の申立をしないで法定期間経過後、直接、訴願庁に提起された訴願であつても、訴願庁が宥恕すべき事情があると認めてこれを受理し棄却の裁決をした場合には、右裁決は、行政事件訴訟特例法第五条第四項にいう訴願の決定にあたる。 三 異議の申立を経ない訴願であつても、訴願庁においてこれを受理し、その実体につき裁決を与えた以上、訴願の提起につき異議の申立を経なかつたということは、訴願人に対する関係においては、右裁決を取り消すべき瑕疵とはならない。
一 訴願権者でない者の提起した訴願を不適法として却下する裁決は、行政事件訴訟特例法第五条第四項にいう訴願の裁決にあたるか 二 農地売渡計画に対し異議の申立をしないで法定期間経過後、直接、訴願庁に提起された訴願を棄却する裁決は、行政事件訴訟特例法第五条第四項にいう訴願の裁決にあたるか 三 異議の申立を経ない訴願を訴願庁が受理し実体的裁決を与えた場合において、訴願の提起につき異議の申立を経なかつたということは、右裁決を取消すべき瑕疵となるか
行政事件訴訟特例法5条4項,行政事件訴訟特例法5条,訴願法8条,自作農創設特別措置法19条
判旨
不適法な訴願等であっても、行政庁が宥恕して実体判断を下した場合は、出訴期間は裁決から起算され、手続的瑕疵の治癒により訴えの利益も認められる。
問題の所在(論点)
不適法な訴願について訴願庁が実体裁決を下した場合に、原処分の出訴期間の起算点(行政事件訴訟特例法5条4項の適用)および裁決取消訴訟の利益が認められるか。
規範
1. 異議申立等の前置手続を欠くなど不適法な訴願であっても、訴願庁が宥恕すべき事情があると認めて受理し、実体的な棄却裁決をした場合には、出訴期間は裁決があったことを知った日から起算される。 2. 訴願庁が実体裁決を与えた以上、前置手続を経由しなかった瑕疵は訴願人との関係で治癒され、当該瑕疵を理由に裁決の取消しを求めることはできない。また、原処分の取消訴訟が適法である限り、裁決取消しの訴えの利益も失われない。
重要事実
上告人らは、自作農創設特別措置法に基づく農地売渡計画に対し、法定の異議申立手続を経ないまま、直接訴願庁に訴願を提起した。訴願庁はこの不備を却下せず、実体について棄却裁決を下した。上告人らは、この裁決を知った日から1か月以内に売渡計画および裁決の取消訴訟を提起したが、下級審は前置手続の欠缺や出訴期間の徒過を理由に訴えを不適法として却下した。
あてはめ
1. 本件訴願は異議申立を経ず、法定期間経過後に提起されたが、訴願庁が却下せず実体裁決を行ったことは、宥恕事由を認めて受理したものと解するのが相当である。 2. そのため、特例法5条4項に基づき、出訴期間は裁決を知った日から起算されるところ、本件訴えは裁決書送達から1か月以内に提起されており適法である。 3. 前置手続の瑕疵は実体裁決により治癒されており、かつ原処分の取消訴訟が適法に維持されている以上、裁決取消しの訴えの利益を欠くとはいえない。
結論
本件売渡計画および訴願裁決の取消請求に関する部分は、出訴期間内であり訴えの利益も認められるため、却下した原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
行政不服審査を経た場合の出訴期間の特例に関する判断枠組みを示す。不適法な不服申し立てであっても、行政庁側の「宥恕」による実体判断があれば、それに応じた出訴期間の延長を認めるという国民の裁判受ける権利を重視する射程を持つ。
事件番号: 昭和28(オ)484 / 裁判年月日: 昭和32年6月13日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政庁が不変期間の徒過を宥恕して受理した訴願裁決は、行政事件訴訟特例法上の「訴願の裁決」に該当し、当該訴願人の承継人は自ら訴願を経ることなく訴訟を提起できる。 第1 事案の概要:農地買収計画に対し、F社及びGが法定期限を約5ヶ月経過した後に県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は、期限徒過に宥…