自作農創設特別措置法による農地買収計画について異議決定を経ない正当な事由がある場合には、右異議決定を経ない訴願は適法である
自作農創設特別措置法による農地買収計画について異議決定を経ない正当な理由がある場合における右決定を経ない訴願の適否
自作農創設特別措置法7条
判旨
行政不服申立における異議申立て前置主義は絶対的なものではなく、不服申立人に「正当な事由」があるときは、異議申立てを経ずに訴願を提起することが許される。また、適法な訴願の裁決取消訴訟が提起されている場合、事実審係属中であれば出訴期間経過後であっても、処分の取消しを請求の趣旨に拡張できる。
問題の所在(論点)
1. 法律が異議申立てを経てからの訴願を規定している場合に、異議申立てを経ない訴願提起を認める「正当な事由」の有無の判断枠組み。 2. 適法な裁決取消訴訟の係属中に、出訴期間経過後になされた原処分(買収計画)の取消しを求める請求の追加・拡張の可否。
規範
1. 異議申立てを訴願の前提とする前置主義は、行政事件訴訟特例法2条(当時)の精神を類推準用し、不服申立人に「正当な事由」があるときは、これに基づかない訴願提起も適法と解すべきである。 2. 訴願裁決の取消しを求める訴えが適法に提起されている場合、その訴えが実質的に原処分の違法を攻撃するものであるときは、事実審に係属する限り、出訴期間経過後であっても請求の趣旨を拡張して原処分の取消しを併せて訴求できる。
重要事実
上告人らは、本件土地が単独所有ではなく共有であることを理由に、農地買収計画の取消しを求めていた。村農地委員会は、裁判上の共有確認書類が提出されれば計画を取り消す旨の決議をしていたため、上告人らは和解調書謄本を提出して取消しを期待し、法定期間内に異議申立てを行わなかった。その後、上告人らは直接道農地委員会に訴願したが、異議申立てを経ていないとして却下裁決を受けた。上告人らは裁決取消訴訟を提起し、その中で買収計画自体の取消しへと請求を拡張した。
あてはめ
1. 委員会の「共有確認書類があれば取り消す」旨の決議に基づき、上告人らが和解調書の提出により計画取消しを期待して異議申立てをしなかったことは、無理からぬ事情といえる。したがって、異議申立てを経なかったことには「正当な事由」が認められ、訴願は適法である。 2. 上告人らは最初の口頭弁論期日から一貫して裁決の取消しを求めており、これは実質的に買収計画の違法を攻撃するものである。訴願自体が適法である以上、事実審係属中になされた請求の拡張は、出訴期間にかかわらず許容されるべきである。
結論
本件訴願には異議申立てを経ないことにつき正当な事由があり適法である。また、裁決取消訴訟において出訴期間後になされた買収計画取消しの請求拡張も適法であるため、これらを不適法とした原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
行政救済における手続的前置の要件を、国民の権利救済の観点から弾力的に解釈した事例である。特に「正当な事由」による前置不全の救済や、裁決取消訴訟から原処分取消訴訟への請求拡張の許容範囲を示す際、実務上および答案上の重要な論拠となる。
事件番号: 昭和27(オ)113 / 裁判年月日: 昭和31年3月9日 / 結論: その他
一 訴願権者でない者の提起した訴願を不適法として却下する裁決は、行政事件訴訟特例法第五条第四項にいう訴願の裁決にあたらない。 二 農地売渡計画に対し異議の申立をしないで法定期間経過後、直接、訴願庁に提起された訴願であつても、訴願庁が宥恕すべき事情があると認めてこれを受理し棄却の裁決をした場合には、右裁決は、行政事件訴訟…