判旨
行政庁が不変期間の徒過を宥恕して受理した訴願裁決は、行政事件訴訟特例法上の「訴願の裁決」に該当し、当該訴願人の承継人は自ら訴願を経ることなく訴訟を提起できる。
問題の所在(論点)
不変期間を徒過して提起された訴願に対し、行政庁が宥恕して下した実質的裁決が訴願前置の「裁決」に当たるか。また、訴願人の承継人が自ら訴願を経ることなく訴えを提起できるか。
規範
行政庁が、訴願の提起期間の懈怠につき宥恕すべき事由があると認めて受理し、実質的な審議を経て下した棄却裁決は、訴願前置主義における「訴願の裁決」(行政事件訴訟特例法5条4項)に該当する。また、訴願を提起した者の承継人は、被承継人について右裁決がある以上、自ら異議・訴願の手続を改めて経ることなく、当該裁決及び処分の取消訴訟を提起することができる。
重要事実
農地買収計画に対し、F社及びGが法定期限を約5ヶ月経過した後に県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は、期限徒過に宥恕すべき事由があるとしてこれを受理し、実質的審議の末に棄却裁決を下した。上告人らはF社らの承継人であったが、自ら改めて訴願等を経ることなく本件買収計画等の取消訴訟を提起したため、訴願前置の要件を満たさないとして適法性が争われた。
あてはめ
裁決庁が訴願書記載の事実を宥恕すべき事由と認めて受理したことは、その裁量に属する事柄であり、実際に本件記録上も懈怠を宥恕すべき事由が認められる。この場合、形式上の期限徒過があっても、実質的審議を経て下された裁決は適法な裁決として扱われる。そして、上告人らは訴願をしたF社らの承継人であるから、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、既に存在する裁決を援用して訴訟を提起することが可能であると解される。
結論
本件訴訟は訴提起の要件を充足し適法である。不変期間徒過を宥恕した裁決も訴願前置を満たし、承継人による提訴も認められる。
実務上の射程
行政庁が裁量により期間徒過を宥恕して実質審理を行った場合、裁判所はその裁定を尊重し、訴願前置の充足を肯定する。また、訴願前置の効果は承継人にも及ぶため、承継人が再度同一の不服申立てを行う必要はないことを示した。
事件番号: 昭和27(オ)284 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法による農地買収計画について異議決定を経ない正当な事由がある場合には、右異議決定を経ない訴願は適法である