行政処分に対する異議申立が法定期間経過後になされた場合、異議決定庁は諸般の事情を考察し宥恕すべき事由があると認めるときは、その裁量によりこれを受理することができる。
法定期間経過後の異議申立と宥恕による受理
自作農創設特別措置法7条1項,訴願法8条3項
判旨
行政処分に対する異議申立てが法定の期間を経過した後になされた場合であっても、決定庁は諸般の事情を考慮して宥恕すべき事由があると認めるときは、その裁量によりこれを受理することができる。また、土地使用目的の変更が相当な農地について、法令上の除外指定手続を経ずに買収計画を樹立することは違法である。
問題の所在(論点)
1. 行政処分に対する不服申立てが法定期間経過後になされた場合、行政庁の裁量によりこれを受理し、有効な決定を行うことができるか。2. 法令上の買収除外要件に該当する農地について、指定手続を経ずに買収計画を策定することは違法か。
規範
行政処分に対する異議申立ての法定期間は、原則として厳格に遵守されるべきであるが、行政庁は諸般の事情を考察し、宥恕すべき事由があると認めるときは、その裁量により期間経過後の不服申立てを受理することができる。また、自作農創設特別措置法等の法令に基づき、特定の要件(土地使用目的の変更の相当性等)に該当することを理由として買収対象から除外すべき農地については、適正な指定手続を欠いたまま買収計画を樹立することは、手続上の瑕疵として当該処分を違法とする。
重要事実
本件土地につき、農地委員会が自作農創設特別措置法に基づき買収計画を策定した。これに対し、被上告人は同法に定める縦覧期間(異議申立期間)を経過した後に異議を申し立てた。農地委員会は、期間経過後であるにもかかわらず、この異議申立てを受理して決定を行った。上告人は、期間徒過後の異議申立てに基づく決定等はすべて無効であり、訴訟要件を欠くと主張した。また、本件土地は「近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地」に該当していたが、委員会は除外指定の手続を経ずに買収計画を樹立していた。
あてはめ
1. 異議決定庁は、期間経過後の申立てであっても、諸般の事情に照らして宥恕すべき事由があると判断すれば、裁量によってこれを受理し得る。本件では、農地委員会が期間徒過後に受理・決定していることから、裁量により宥恕したものと解され、当該決定およびそれに基づく裁決は有効な行政処分として存続する。2. 本件土地は土地使用目的の変更が相当な農地(自創法5条5号)に該当する。それゆえ、委員会は県知事の承認を得て除外指定の手続を執るべき義務があった。この手続を怠ってなされた買収計画の樹立は、法令の規定に反し違法といわざるを得ない。
結論
期間徒過後の異議申立てを受理した決定は有効であり、訴訟要件は満たされる。また、除外指定手続を欠いた買収計画は違法であるため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政不服申立てにおける期間制限の「裁量による宥恕」を認めた重要な先例である。答案上は、不服申立期間の徒過が問題となる事案において、行政庁が実質審査に入っている場合に、手続の適法性を基礎づける論拠として活用できる。また、実体的な除外事由がある場合の手続欠缺が処分を違法に導くという構成も、手続的瑕疵の論点で参考となる。
事件番号: 昭和27(オ)113 / 裁判年月日: 昭和31年3月9日 / 結論: その他
一 訴願権者でない者の提起した訴願を不適法として却下する裁決は、行政事件訴訟特例法第五条第四項にいう訴願の裁決にあたらない。 二 農地売渡計画に対し異議の申立をしないで法定期間経過後、直接、訴願庁に提起された訴願であつても、訴願庁が宥恕すべき事情があると認めてこれを受理し棄却の裁決をした場合には、右裁決は、行政事件訴訟…
事件番号: 昭和24(オ)14 / 裁判年月日: 昭和24年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消訴訟における出訴期間の起算点に関し、処分の有効・無効は原則として影響せず、処分があったことを知った日から期間が進行する。また、たとえ処分自体に違法の疑いがあっても、法定の不服申立期間を経過した後の提訴は不適法である。 第1 事案の概要:上告人らは、自作農創設特別措置法に基づく被上告委…
事件番号: 昭和27(オ)857 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】客観的に買収除外要件に該当する農地について、行政庁が指定等の手続を怠り買収処分を行った場合、当該手続の不備は買収処分の違法事由となり、当該処分に対する不服申立て等を通じて是正を求めることができる。 第1 事案の概要:上告人(行政側)は、自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った。当該農地は…