判旨
行政処分の取消訴訟における出訴期間の起算点に関し、処分の有効・無効は原則として影響せず、処分があったことを知った日から期間が進行する。また、たとえ処分自体に違法の疑いがあっても、法定の不服申立期間を経過した後の提訴は不適法である。
問題の所在(論点)
行政処分の取消しの訴えにおいて、処分が違法又は無効であると主張される場合であっても、出訴期間の制限は一律に適用されるか。また、処分の送達を受けた事実がある場合に「処分を知った」といえるか。
規範
行政処分の取消しの訴えに係る出訴期間の起算点(「処分のあつたことを知つた日」)の算定においては、当該処分の内容が有効であるか無効であるかは問題とならない。また、処分に違法事由が存在する場合であっても、法律に定められた出訴期間内に訴えを提起しない限り、当該訴えは不適法として却下を免れない。
重要事実
上告人らは、自作農創設特別措置法に基づく被上告委員会の異議却下決定に対し、不服の訴えを提起した。原審の認定によれば、当該却下決定の謄本は昭和22年11月17日に上告人らに送達されたが、上告人らが本訴を提起したのは昭和23年4月19日であった。自作農創設特別措置法改正法律(昭和22年法律第241号)附則第7条第1項は、改正法施行前の処分を知った者について、改正法施行後1か月以内に出訴すべき旨を定めていた。
あてはめ
本件において、上告人らは昭和22年11月17日に決定謄本の送達を受けており、遅くとも同日には「決定のあつたことを知り、又は知ることができた」と認められる。出訴期間の起算に関しては、当該却下決定が法定期間経過後になされた等の実体的な有効・無効は影響しない。したがって、改正法律の施行(同年12月26日)から1か月を大幅に経過した昭和23年4月の提訴は、法律上の出訴期間を遵守したものとはいえない。処分の違法性の有無にかかわらず、期間の徒過という形式的要件により不適法となる。
結論
本件訴えは、法定の出訴期間経過後に提起されたものであるため、不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
行政救済法における出訴期間(現行行政事件訴訟法14条等)の厳格性を確認する事案である。処分の効力(公定力)を争う場合であっても、期間制限の遵守は訴訟要件として不可欠であり、処分の内容の当否に踏み込む前に門前払いされることを示す。答案上は、出訴期間の起算点や不変期間の遵守を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)253 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政事件訴訟特例法5条5項の「特別の定」には、昭和22年3月1日以降に制定された法律が含まれ、たとえそれが従前の法律の改正規定であっても適用される。自作農創設特別措置法47条の2による出訴期間の制限は、同条項の特別の定に該当し、憲法にも違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法…
事件番号: 昭和25(オ)10 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消しを求める訴えが、出訴期間を経過した後に提起された不適法なものである場合、当該処分に無効原因があるとの主張が含まれていても、裁判所は処分の当否について実体的な判断を加える必要はない。 第1 事案の概要:上告人所有の農地に対し、農地委員会および県知事が農地買収計画および買収処分を行った…
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
事件番号: 昭和26(オ)392 / 裁判年月日: 昭和27年11月20日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第四七条の二にいう「当事者がその処分のあつたことを知つた日」とは、当事者が書類の交付、口頭の告知その他の方法により処分を現実に知つた日を指すのであつて、抽象的な知り得べかりし日を意味するものではない。