判旨
農地買収計画は、それ自体が法律上の効果を伴う厳格な行政処分とは言えないとしても、法律が異議・訴願の手続を定めている以上、争訟手続においては行政処分に類する性質を持つ。したがって、その取消訴訟の出訴期間は、特例法に従い訴願に対する裁決を知った日から起算されるべきであり、その後の買収令書交付を待つものではない。
問題の所在(論点)
農地買収計画が取消訴訟の対象となる行政処分性を有するか、またその出訴期間の起算点はいつか。特に、買収手続が完了する「買収令書の交付時」を起算点とすべきかが問題となる。
規範
行政処分に準ずる手続上の法的地位を認めるべき行為については、たとえ厳格な意味での行政処分に該当しなくとも、法律が争訟手続の対象として規定している場合には、当該行為を争訟の対象(処分性)として認めることができる。その場合の出訴期間は、特別の定めがある場合を除き、行政不服申立てに対する裁決等の告知を受けた時点を基準として起算される。
重要事実
農地委員会は上告人の所有地について自作農創設特別措置法に基づく買収計画を立てた。上告人は異議申し立て及び訴願を行ったが、昭和22年9月30日に棄却裁決がなされ、同年12月27日にその裁決書が送達された。その後、昭和23年5月28日に買収令書が交付されたため、上告人は同年8月16日に買収計画取消請求訴訟を提起した。原審は、同法47条の2に定める「処分があったことを知った日から1か月」の出訴期間を徒過しているとして訴を却下した。
あてはめ
自作農法7条が買収計画に対する異議および訴願の手続を定めていることから、買収計画には「行政処分類似の性質」が認められ、独立して争訟の対象となる。本件では、行政訴訟事件特例法5条4項に基づき、訴願に対する裁決がなされた時が出訴期間の基準となる。上告人は昭和22年12月に裁決書の送達を受けており、その時点から1か月以内に提訴すべきであった。買収令書の交付は買収計画に基づく後続の行為に過ぎず、本訴が計画自体の取消を求めるものである以上、令書交付の有無や時期は出訴期間の起算に影響しない。したがって、昭和23年8月の提訴は期間を徒過しているといえる。
結論
本件訴訟は出訴期間経過後の不適法な訴えであり、却下した原判決は妥当である。上告棄却。
事件番号: 昭和24(オ)14 / 裁判年月日: 昭和24年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消訴訟における出訴期間の起算点に関し、処分の有効・無効は原則として影響せず、処分があったことを知った日から期間が進行する。また、たとえ処分自体に違法の疑いがあっても、法定の不服申立期間を経過した後の提訴は不適法である。 第1 事案の概要:上告人らは、自作農創設特別措置法に基づく被上告委…
実務上の射程
行政庁の内部的な準備行為であっても、法律がそれ自体を対象とした不服申立手続を設けている場合には、例外的に「処分性」が認められ、独自の出訴期間が進行することを示す。一連の手続過程における各段階の独立性を考慮し、どの行為を争うのかによって起算点が異なる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和28(オ)1347 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する不服申立期間を徒過してなされた不適法な申立てに対し、却下裁決がなされた場合には、訴願前置主義の下ではもはや原処分の当否を争う取消訴訟を提起することはできない。 第1 事案の概要:本件買収計画が昭和23年9月2日に定められ、同月3日から12日まで縦覧に供された。上告人がこれに対し異議…
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和25(オ)10 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消しを求める訴えが、出訴期間を経過した後に提起された不適法なものである場合、当該処分に無効原因があるとの主張が含まれていても、裁判所は処分の当否について実体的な判断を加える必要はない。 第1 事案の概要:上告人所有の農地に対し、農地委員会および県知事が農地買収計画および買収処分を行った…