同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があるにかかわらず、同委員会が同一目的地につき再度買収計画を定めることが訴願法第一六条に違反しない場合。
訴願法16条,自作農創設特別措置法7条
判旨
行政庁による買収計画の取消裁決がなされた場合であっても、その裁決が同一の対象について再び買収計画を定めることを禁止する趣旨でない限り、改めてなされた買収計画およびそれに対する裁決は、先の裁決に抵触せず適法である。
問題の所在(論点)
行政庁による取消裁決(前裁決)があった後に、同一の対象に対して再度なされた処分およびそれを維持する裁決が、前裁決の拘束力に抵触し違法となるか。
規範
行政処分を取消す裁決がなされた場合、その裁決の拘束力(行政不服審査法上の効力に相当)が及ぶ範囲は、裁決の理由となった具体的理由や事情に限定される。裁決が「再び同一の処分をすることを許さない」という趣旨を含まない場合には、先行する裁決に抵触することなく、改めて同一対象に対して処分を行うことが可能である。
重要事実
1. 県委員会は、昭和27年2月14日、本件農地に関する買収計画を一度取り消す裁決(前裁決)を行った。2. その後、町委員会は同年3月27日に、本件農地について改めて買収計画を策定した。3. これに対し、上告人は不服を申し立てたが、県委員会は訴願を却下する裁決を行った。4. 上告人は、後の裁決が先行する前裁決に抵触し、違憲・違法であると主張して争った。
事件番号: 昭和27(オ)846 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】買収計画が協定を理由として取り消された場合であっても、当該協定の不履行があったときは、再度同一の対象に対して買収計画を立てることは違法ではない。 第1 事案の概要:農地の買収計画に関し、当事者間での協定(合意)が成立したことを理由として、一度は買収計画が取り消された。しかし、その後当該協定が履行さ…
あてはめ
本件における前裁決は、原判示の事情に基づいてなされたものであり、本件農地について「再び買収計画を定めることを許さない」という趣旨で出されたものではない。したがって、町委員会が改めて買収計画を樹てたこと、および県委員会がこれに対する訴願を却下したことは、前裁決の判断内容や効力に抵触するものではない。上告人の主張は、前裁決が再度の処分を禁止する趣旨であることを前提としているが、事実に照らせばその前提は認められない。
結論
改めてなされた買収計画および却下裁決は、前裁決に抵触するものではなく適法である。上告を棄却する。
実務上の射程
行政不服審査法に基づく裁決の拘束力(現在の行審法52条1項等)の及ぶ範囲を判断する際の基準となる。裁決の主文だけでなく、その理由となった事情を吟味し、再処分の禁止までを含む趣旨かどうかを確認すべきであるという実務上の指針を示している。
事件番号: 昭和29(オ)258 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
事件番号: 昭和27(オ)355 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
村農地委員会の定めた農地買収計画につき県農地委員会に訴願が提起された後村農地委員会が右計画を取り消した場合において、右取消の効果は、その後訴願棄却の裁決があつても影響を被ることはない。