判旨
買収計画が協定を理由として取り消された場合であっても、当該協定の不履行があったときは、再度同一の対象に対して買収計画を立てることは違法ではない。
問題の所在(論点)
一度取り消された買収計画の対象について、取消理由となった協定の不履行を理由に、再度買収計画を立てることが許されるか。
規範
行政庁が一度取り消した買収計画について、その取消しの根拠となった協定が不履行に終わった場合には、事情の変更が生じたものとして、改めて同一の対象に対し買収計画を決定することが許容される。
重要事実
農地の買収計画に関し、当事者間での協定(合意)が成立したことを理由として、一度は買収計画が取り消された。しかし、その後当該協定が履行されなかったため、行政庁は再び同一の土地を対象とした買収計画を策定した。上告人は、この再度の買収計画の違法性を主張して争った。
あてはめ
本件では、当初の買収計画が取り消された理由は、当事者間での協定が成立したことにあった。しかし、その後に協定の不履行という新たな事実が発生している。このような場合、取消しの前提条件が失われたといえるため、行政庁が再び買収の必要性を判断して計画を策定することは、先行する取消行為と矛盾するものではなく、適法な権限行使の範囲内であると解される。
結論
協定の不履行がある以上、再度の買収計画は違法とはいえず、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
行政処分が撤回・取消された後、その原因となった事情(本件では協定の存在)が消滅した場合における再処分の可否を判断する際の基準となる。信賴保護や既判力に類似する抵触が問題となる場面での「事情変更」の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)432 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
農地委員会が農地買収計画を定めた後、小作人と農地所有者との間の協定により所有者の自作を相当と認め、右買収計画を取り消したが、所有者が右協定に違背したものと認められる場合は、農地委員会が前の買収計画と同じ内容の買収計画を定めても違法ではない。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
事件番号: 昭和40(行ツ)103 / 裁判年月日: 昭和42年9月26日 / 結論: 破棄自判
宅地買収計画を取り消す旨の異議決定が確定すれば、買収の申請は当然に効力を失うものと解すべきであつて、右買収の申請に基づき再度樹立された宅地買収計画は、違法である。