判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。
問題の所在(論点)
一旦取り消された買収計画について、法定の買収指示請求期間を経過した後に都道府県農地委員会が指示を行い、市町村農地委員会が再度の買収計画を策定することの是非。特に行政手続上の瑕疵が買収計画の効力に及ぼす影響が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法(以下「法」)6条の3に基づく都道府県農地委員会の指示は、買収指示の請求がない場合であっても、同条の文理に照らし、市町村農地委員会に対し再び買収計画を指示することを妨げるものではない。また、法6条の2、6条の3、6条の5によれば、市町村農地委員会は小作人の申請、都道府県農地委員会の指示、さらには職権によっても遡及買収計画を定めることができる。したがって、買収対象農地が遡及買収の適地である限り、上位機関の指示に瑕疵があったとしても、直ちに買収計画自体が違法となるものではない。
重要事実
上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づき買収計画が立てられたが、上告人らの異議申立てにより事実上取り消された。その後、法6条の3に定める1か月以内に、小作農らから長崎県農地委員会に対して買収指示の請求はなされなかった。しかし、その後改めて買収計画が策定されたため、上告人らは買収指示の請求という法定の手続を経ていない再度の指示および買収計画は違法であると主張して争った。
あてはめ
法6条の3は、特定の請求期間内に請求があった場合の都道府県農地委員会の義務を定めたものであり、期間外の請求や請求がない場合に指示を行うことを禁止する趣旨ではない。本件において、買収計画が異議により取り消された後、法定期間内に請求がなかった事実は認められる。しかし、市町村農地委員会は法6条の5等に基づき、職権によっても遡及買収計画を策定し得る権限を有している。本件農地が遡及買収の適地である以上、仮に都道府県農地委員会の指示に手続上の瑕疵があったとしても、市町村農地委員会による買収計画の策定という行政処分の効力を否定する理由にはならないといえる。
結論
本件買収計画は適法である。都道府県農地委員会の指示に基づき、あるいは職権により買収適地について計画を策定することは認められ、請求期間の経過は計画を違法とする事由にはならない。
事件番号: 昭和29(オ)258 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。
実務上の射程
行政庁に職権による処分権限が並存して認められる場合において、申請や指示といった先行手続に形式的な瑕疵があっても、処分対象の客観的要件(本件では買収適地性)を満たしている限り、処分の実体的妥当性を重視してその効力を維持する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)3 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第三条第一項第一号によつて準地区として指定すべき区域について指定を行わず、その区域内の農地を不在地主の小作地として買収することは違法である。
事件番号: 昭和36(オ)947 / 裁判年月日: 昭和38年3月15日 / 結論: 棄却
被買収者が農地所在の村で農地委員の選挙権を行使した等の事実があつても、右買収基準時に教師として他村に転任しその学校住宅に家族とともに居住していたという事実関係のもとにおいては、その住所が当該農地の所在地にあつたと認めなければならないものではない。
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
事件番号: 昭和27(オ)846 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】買収計画が協定を理由として取り消された場合であっても、当該協定の不履行があったときは、再度同一の対象に対して買収計画を立てることは違法ではない。 第1 事案の概要:農地の買収計画に関し、当事者間での協定(合意)が成立したことを理由として、一度は買収計画が取り消された。しかし、その後当該協定が履行さ…