被買収者が農地所在の村で農地委員の選挙権を行使した等の事実があつても、右買収基準時に教師として他村に転任しその学校住宅に家族とともに居住していたという事実関係のもとにおいては、その住所が当該農地の所在地にあつたと認めなければならないものではない。
農地の遡及買収基準時における被買収者の住所の認定が是認された事例。
民法21条,自作農創設特別措置法3条1項1号
判旨
買収計画において根拠条文の記載は必須ではなく、また不適格な者からの申請に基づき遡及買収の手続が開始された場合であっても、行政庁が職権で遡及買収を行うことを妨げない。
問題の所在(論点)
1. 農地買収計画の効力発生に根拠条文の記載が必要か。2. 不適格な者からの申請があった場合に、職権による遡及買収が可能か。3. 買収基準日当時の自作事実および住所の認定方法。
規範
1. 農地買収計画において、その根拠となる具体的な条文を記載することは必須ではない。2. 遡及買収の申請があり、仮にその申請者が適格を欠く者であったとしても、行政庁が当該農地について職権により遡及買収を行う権限を失うものではない。
重要事実
上告人の所有地について、旧自作農創設特別措置法6条の5に基づく職権による遡及買収計画が定められた。上告人は、①本件計画に根拠条文の記載がないこと、②上告人が自作していた事実があること、③遡及基準日に住所が当該村にあったこと、④本件計画が不適格な者による申請に基づくもので職権行使ではないこと、⑤二重の計画であることを理由に無効を主張して争った。
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
あてはめ
1. 買収計画に根拠条文を記載すべき法的根拠はなく、記載がなくとも同法6条の5に基づく計画と認定することに支障はない。2. 被上告人が一部農地を自作地として買収しなかった事実は、買収計画当時の自作を認めたに過ぎず、遡及時期における自作を肯定するものではない。3. 証拠上、上告人は家族と共に転任先に居住しており、旧住所に居住していたとは認められない。4. 仮に申請者が不適格であっても、行政庁が職権で遡及買収を行う法的権限は排斥されない。
結論
本件買収計画に違法はなく、上告人の請求は認められない(上告棄却)。
実務上の射程
行政処分の根拠規定の表示義務や、申請と職権の排他的関係が問題となる場面で活用できる。申請に瑕疵があっても、行政庁に職権行使の余地がある限り、当該処分の効力は維持されうるという判断枠組みを示すものである。
事件番号: 昭和32(オ)440 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
未墾地買収においては、買収目的地の実測面積の表示を欠いた買収計画であつても、買収目的地の特定性が動かない限り、違法ではない。
事件番号: 昭和28(オ)1347 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する不服申立期間を徒過してなされた不適法な申立てに対し、却下裁決がなされた場合には、訴願前置主義の下ではもはや原処分の当否を争う取消訴訟を提起することはできない。 第1 事案の概要:本件買収計画が昭和23年9月2日に定められ、同月3日から12日まで縦覧に供された。上告人がこれに対し異議…
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…
事件番号: 昭和27(オ)556 / 裁判年月日: 昭和28年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】小作調停により成立した農地賃貸借の合意解除は、その成立に至った事情に照らして適法かつ正当と認められる限り、有効である。 第1 事案の概要:本件係争田地に関する賃貸借について、当事者間で小作調停が行われた。その結果、当該調停において賃貸借を合意解除する旨の合意が成立した。上告人は、当該合意解除が適法…