未墾地買収においては、買収目的地の実測面積の表示を欠いた買収計画であつても、買収目的地の特定性が動かない限り、違法ではない。
実測面積の表示を欠く未墾地買収計画の適否。
自作農創設特別措置法31条1項,自作農創設特別措置法31条2項,自作農創設特別措置法34条,自作農創設特別措置法10条
判旨
自創法30条に基づく未墾地買収において、農地委員会は政府の機関として具体的権限を行使するものであり、買収時期までに買収令書が交付されなかったとしても、直ちに処分が無効となるわけではない。
問題の所在(論点)
自創法に基づく未墾地買収処分の適法性。特に、農地委員会の法的地位、買収計画の取消手続、面積表示の瑕疵、および買収令書の交付遅延が処分の効力に与える影響が問題となった。
規範
1. 自創法30条の規定は、未墾地買収に関し、農地委員会を政府の機関として具体的権限を行使させる趣旨であり、政府の権限を委譲するものではない。 2. 行政処分(買収処分)において、法令等に定められた形式的・時間的要件(公簿面積と実測の齟齬、買収時期までの令書交付等)に瑕疵があったとしても、処分の特定性や本質的要素を損なわない限り、当然に処分を無効ならしめるものではない。
重要事実
村農地委員会が本件土地を「開墾適地」と判断して買収計画を樹立し、その後、当初の計画を取り消して新たな買収計画を立てた事案。原告(上告人)側は、(1)未墾地買収権限の所在、(2)農地委員会の裁量権逸脱、(3)県農地委員会の承認欠如、(4)公簿面積と実測面積の不一致、(5)買収令書の交付が買収時期に遅れたこと、などを理由に処分の無効または違法を主張した。
事件番号: 昭和30(オ)436 / 裁判年月日: 昭和31年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張されていない新たな事実や主張を理由に原判決の違法を問うことはできない。本件では、買収計画の区域不確定による違法性や特定の書面の陳述の有無が争点となったが、いずれも原審での主張が認められず、上告が棄却された。 第1 事案の概要:上告人は、農地の買収計画の取消を求めて訴えを提…
あてはめ
1. 権限:農地委員会は政府の補助機関として機能しており、権限委譲ではない。 2. 裁量:開墾適地の判断は農地委員会の裁量の範囲内である。 3. 手続:買収計画の取消に県農地委員会の承認は不要であり、二重買収にも当たらない。 4. 特定性:実測面積と公簿面積に相違があっても、買収目的地の特定性が維持されている以上、違法ではない。 5. 時期:買収令書に記載された買収時期までに令書が交付されなかった事実は、処分の無効事由には当たらない。
結論
本件各買収手続に重大な違法はなく、買収令書の交付遅延等も処分の効力を当然に否定するものではない。上告棄却。
実務上の射程
行政処分の効力(特に無効と取消しの区別)や、行政機関の補助的地位に関する論点で活用できる。軽微な手続的瑕疵や、目的物の特定を妨げない程度の記載の不一致が、直ちに処分の効力を否定しないとする判断枠組みとして参考になる。
事件番号: 昭和30(オ)756 / 裁判年月日: 昭和31年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地買収処分において、買収区域が買収令書によって特定されていない場合は違法であるが、令書の作成過程や標識設置時期に変更等があっても、直ちに区域が不特定であるとは断定できない。 第1 事案の概要:上告人は、国による本件未墾地買収処分について、その買収区域が不特定であるから違法であり、取り消されるべ…
事件番号: 昭和36(オ)947 / 裁判年月日: 昭和38年3月15日 / 結論: 棄却
被買収者が農地所在の村で農地委員の選挙権を行使した等の事実があつても、右買収基準時に教師として他村に転任しその学校住宅に家族とともに居住していたという事実関係のもとにおいては、その住所が当該農地の所在地にあつたと認めなければならないものではない。
事件番号: 昭和31(オ)504 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁決の取消しを求める訴訟において、前提となる行政処分が当然無効であるとしても、そのことは裁決の適法性を左右するものではなく、裁決の取消事由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に対して異議申立ておよび訴願を行ったが、被上告人(県知事)は訴願期間経過後の不適法なものであると…
事件番号: 昭和29(オ)890 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法令の拘束に反しない限り、裁量の性質(法規裁量・自由裁量)にかかわらず違法とはならない。また、行政機関内部の通達(選定基準)に反しても、直ちに当該処分が違法となるわけではなく、法令の趣旨に照らして判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人の所有する未墾地について、自作農創設特別措置法3…