判旨
行政庁の裁決の取消しを求める訴訟において、前提となる行政処分が当然無効であるとしても、そのことは裁決の適法性を左右するものではなく、裁決の取消事由とはならない。
問題の所在(論点)
前提となる行政処分(買収計画)が当然無効である場合、その無効を理由として、不服申立てを期間経過により却下した裁決を取り消すことができるか。
規範
行政処分に対する不服申立てを却下した裁決の取消訴訟において、審理の対象となるのは当該裁決自体の違法性である。したがって、前提となる行政処分に無効事由が存在したとしても、そのことをもって直ちに却下裁決の取消事由とすることはできない。
重要事実
上告人は、農地買収計画に対して異議申立ておよび訴願を行ったが、被上告人(県知事)は訴願期間経過後の不適法なものであるとして却下裁決を下した。上告人は、本件土地の買収計画自体が無効であることを主張し、訴願を却下した裁決の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
上告人の請求は、訴願を却下した裁決の取消しを求めるものである。仮に買収計画が当然無効であったとしても、そのこと自体は計画の無効確認訴訟等で主張すべき事由である。本件のような却下裁決の取消訴訟においては、裁決の手続的適法性が争点となるため、前提処分の実体的な無効事由を裁決の取消事由として主張することはできない。
結論
却下裁決の取消請求は認められない。前提処分の無効は、裁決そのものの取消事由にはならない。
実務上の射程
行政不服申立てに対する却下裁決の取消訴訟において、原処分の違法(たとえ無効事由であっても)を裁決の違法事由として主張することはできないという、訴訟対象の限定を示す。行政事件訴訟法10条2項の「裁決固有の違法」の概念を理解する上での先駆的判断といえる。
事件番号: 昭和30(オ)436 / 裁判年月日: 昭和31年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張されていない新たな事実や主張を理由に原判決の違法を問うことはできない。本件では、買収計画の区域不確定による違法性や特定の書面の陳述の有無が争点となったが、いずれも原審での主張が認められず、上告が棄却された。 第1 事案の概要:上告人は、農地の買収計画の取消を求めて訴えを提…
事件番号: 昭和32(オ)440 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
未墾地買収においては、買収目的地の実測面積の表示を欠いた買収計画であつても、買収目的地の特定性が動かない限り、違法ではない。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和31(オ)503 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地の買収において、当該土地が未墾地に該当するか否かは、登記簿等の公簿上の表示にかかわらず、土地の現況によって判断すべきである。 第1 事案の概要:行政庁が本件土地を「未墾地」として買収処分を行ったのに対し、上告人は、本件土地が潮風等の影響により開拓不適地であること、また、公簿上「畑」となってい…
事件番号: 昭和29(オ)890 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法令の拘束に反しない限り、裁量の性質(法規裁量・自由裁量)にかかわらず違法とはならない。また、行政機関内部の通達(選定基準)に反しても、直ちに当該処分が違法となるわけではなく、法令の趣旨に照らして判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人の所有する未墾地について、自作農創設特別措置法3…