自作農創設特別措置法第三条第一項第一号によつて準地区として指定すべき区域について指定を行わず、その区域内の農地を不在地主の小作地として買収することは違法である。
自作農創設特別措置法第三条第一項第一号にいわゆる準地区の指定をしないでなした農地買収の適否
自作農創設特別措置法1条1項本文1号
判旨
自作農創設特別措置法に基づき、客観的に居住市町村の区域に準ずるものと認められる隣接地の農地については、農地委員会に指定・承認の法的義務があり、その不履行を理由に買収計画の違法を主張できる。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法3条1項1号に基づく「居住市町村の区域に準ずるものとしての指定」がなされていない場合において、農地委員会にその指定を行うべき義務が認められるか。また、買収処分の争訟において、当該指定がなされなかったことの違法を主張できるか。
規範
自作農創設特別措置法3条1項1号が「準ずる区域」の規定を設けた趣旨は、地理的関係等から不在地主として扱うことが過酷な場合に、これを在村地主と同様に扱い買収対象外とすることにある。したがって、客観的に準区域と認められるものについては、農地委員会は指定・承認すべき法律上の義務を負い、これに反した買収は違法となる。また、指定等の不履行は独立の訴訟対象とならないため、買収計画や買収処分の取消訴訟等において、その前提となる指定がなされなかった違法を主張することが認められる。
重要事実
上告人は、自己が所有する農地が、居住する村(D村)の区域に隣接する他市町村(E市)内に存するものの、実質的にはD村の区域に準ずるものであると主張した。しかし、D村およびE市の農地委員会が県農地委員会に隣接地指定の承認を申請したものの、承認が得られなかったため、上告人は不在地主として扱われ、当該農地が買収対象となった。上告人は、この指定手続がとられなかったことの違法を理由に、本件買収計画等の違法を訴えた。
事件番号: 昭和24(オ)223 / 裁判年月日: 昭和29年9月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地委員会は、客観的に準区域と認められる農地を準区域として指定・承認すべき法律上の義務があり、これを怠ってなされた買収処分は違法となる。また、買収処分の取消訴訟等において、当該指定がなされなかった違法を主張することが認められる。 第1 事案の概要:上告人の所有する本件土地(a部落)はb村に所在する…
あてはめ
本件において、隣接地指定の承認が得られなかった具体的な理由は判決文からは不明であるが、法が準区域の規定を置いたのは、地主に対する酷な結果を回避しつつ、小作農創設という法の趣旨に反しないと認めたからである。客観的に準区域の要件を満たすのであれば、農地委員会には指定等の義務があり、これを怠って不在地主として買収することは法の精神に反する。さらに、指定手続は行政内部の関係にとどまり農地所有者に直接の不服申立手段がない以上、買収処分等の訴訟において当該不作為の違法を主張させるべきである。
結論
客観的に準区域と認められるべき農地について、指定・承認を欠いたままなされた買収計画は違法である。原審は指定がなされなかったことの違法の有無について審理を尽くしておらず、破棄差戻しを免れない。
実務上の射程
行政処分に至る先行手続において、それ自体が独立した抗告訴訟の対象とならない「内部的な行為」であっても、その瑕疵が最終的な処分の違法性を構成し、当該処分の取消訴訟等において主張可能であることを示した点に実務上の意義がある。違法性の承継や、行政庁の裁量権の限界(義務的行為の不履行)を論ずる際の参考となる。
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和26(オ)903 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく宅地の附帯買収が認められるためには、当該宅地が売渡農地の経営に必要であることが必要である。この「必要」性の判断においては、全農地の経営における売渡農地の重要度や法の目的に照らし、耕作農家の地位安定に適合するか否かを基準とすべきである。 第1 事案の概要:農…
事件番号: 昭和25(オ)221 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
昭和二二年法律第二四一号による自作農創設特別措置法改正後の同法第六条の二第二項各号に該当する場合は、右改正前の同法附則第二項による農地買収計画も違法である。