判旨
農地委員会は、客観的に準区域と認められる農地を準区域として指定・承認すべき法律上の義務があり、これを怠ってなされた買収処分は違法となる。また、買収処分の取消訴訟等において、当該指定がなされなかった違法を主張することが認められる。
問題の所在(論点)
行政庁の指定行為等の処分がなされていない場合において、その指定がなされるべきであったことを理由として、後続の行政処分(買収処分)の違法を主張できるか。具体的には、準区域の指定がなされていないことが買収処分の取消事由となるか。
規範
自作農創設特別措置法3条1項1号の「準区域」に該当すべき客観的事実がある場合、農地委員会にはこれを指定・承認すべき拘束的な法律上の義務がある。したがって、かかる指定手続を欠いたまま不在地主の農地としてなされた買収処分は、同法の趣旨に反し違法となる。また、事前の指定がなされていない場合であっても、買収処分を争う争訟において、その指定がなされなかったことの違法を主張し、処分の取消を求めることが可能である。
重要事実
上告人の所有する本件土地(a部落)はb村に所在するが、上告人が居住するc町に隣接していた。上告人は、本件土地が地理的関係からc町に準ずる地域(準区域)として取り扱われるべきであり、指定がなされないまま不在地主としてなされた買収処分は違法であると主張した。これに対し、原審は、町村農地委員会による準区域の指定が実際になされていない以上、上告人の主張は採用できないとして、買収処分を有効と判断した。
あてはめ
本件土地が地理的その他の関係から客観的に準区域と認められるべき状況にあるならば、農地委員会には指定の義務が生じる。原審は、実際に指定がなされていないという形式的事実のみをもって上告人の主張を退けたが、本来であれば、本件土地が客観的に準区域としての実質(地理的関係等)を備えていたかを審理すべきであった。客観的状況が認められるにもかかわらず指定を怠ったのであれば、その不作為を理由に買収処分の取消しを求めることができるため、審理不尽の違法がある。
結論
原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。客観的に準区域と認められるべき状況があるか否かを審理した上で、買収処分の違法性を判断すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)3 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第三条第一項第一号によつて準地区として指定すべき区域について指定を行わず、その区域内の農地を不在地主の小作地として買収することは違法である。
実務上の射程
行政行為の先行行為(または前提となる指定処分)が欠けている場合であっても、それが法律上の義務である場合には、後続処分の取消訴訟においてその欠落を違法事由として主張できることを示した。裁量的判断とされる行為であっても、客観的状況により義務づけられる「裁量権の逸脱・濫用(またはゼロへの収縮)」の文脈で、取消事由を構成する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)221 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
昭和二二年法律第二四一号による自作農創設特別措置法改正後の同法第六条の二第二項各号に該当する場合は、右改正前の同法附則第二項による農地買収計画も違法である。
事件番号: 昭和34(オ)1181 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、買収対象地の選択は行政庁の裁量に属し、地主に選択権はない。また、宅地化の予見可能性がない農地は同法5条5号の除外事由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人の所有する本件農地に対し、国が自作農創設特別措置法に基づき買収処分を行った。これに対し上告人は…
事件番号: 昭和26(オ)7 / 裁判年月日: 昭和27年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地買収において、複数の開拓適地が存在する場合の選択は農地委員会の裁量に属し、裁判所の審査は買収対象が法定要件を充足しているか否か、及び手続の適法性に限られる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、農地委員会が上告人所有の山林を未墾地として買収する処分を行った。これに対し上告人が、①…