判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、買収対象地の選択は行政庁の裁量に属し、地主に選択権はない。また、宅地化の予見可能性がない農地は同法5条5号の除外事由に該当しない。
問題の所在(論点)
1. 買収処分当時、将来の宅地化が予見できない場合でも同法5条5号の買収除外事由に該当するか。2. 小作地の買収において、地主に買収対象地を選択する権利が認められるか。
規範
1. 自作農創設特別措置法5条5号にいう「近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地」に該当するか否かは、買収処分当時において、近い将来に宅地化されること等が客観的に予見できたか否かによって判断される。2. いかなる小作地を買収するかについて、地主に選択権は認められない。
重要事実
上告人の所有する本件農地に対し、国が自作農創設特別措置法に基づき買収処分を行った。これに対し上告人は、(1)本件農地付近は最適の住宅地であり、買収当時から住宅地化が必至であったため買収除外事由(同法5条5号)に該当する、(2)上告人は別途買収希望地を申し立てていたにもかかわらず、希望しない本件農地を買収したのは違法である、と主張して処分の取り消しを求めた。
あてはめ
1. 本件農地付近は現在でこそ住宅街になりつつあるものの、買収当時においては近い将来に宅地化されると予想することは極めて困難であった。したがって、客観的に土地使用目的の変更が相当であったとはいえず、同法5条5号の除外事由にはあたらない。2. 法令上、買収すべき小作地の選定について地主に選択権を付与する規定はなく、農地委員会が地主の希望に反して本件農地を選択したとしても、直ちに違法とはならない。
結論
本件買収処分は適法である。買収対象地の選定について地主に選択権はなく、また買収当時に宅地化の予見可能性が認められない以上、除外事由にも該当しないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和26(オ)7 / 裁判年月日: 昭和27年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地買収において、複数の開拓適地が存在する場合の選択は農地委員会の裁量に属し、裁判所の審査は買収対象が法定要件を充足しているか否か、及び手続の適法性に限られる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、農地委員会が上告人所有の山林を未墾地として買収する処分を行った。これに対し上告人が、①…
実務上の射程
行政庁の裁量権の範囲と、事実認定に基づく予見可能性の判断基準を示した事例である。答案上では、特定の土地を選択する行政処分の裁量性や、法的な除外事由の判断基準時(処分時)を論ずる際の参照判例となる。
事件番号: 昭和34(オ)681 / 裁判年月日: 昭和37年3月1日 / 結論: 棄却
いわゆる刈分小作地が昭和二二年三月頃当事者間の合意によつて、そのうちの約四割を地主の自作地とし残余の部分を数名の「作人」らの小作地とした場合、従前の「作人」で新らたに小作人となつた者によつてなされた右小作地についての遡及買収の申請であつても、許されないものと解すべきである。
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…