いわゆる刈分小作地が昭和二二年三月頃当事者間の合意によつて、そのうちの約四割を地主の自作地とし残余の部分を数名の「作人」らの小作地とした場合、従前の「作人」で新らたに小作人となつた者によつてなされた右小作地についての遡及買収の申請であつても、許されないものと解すべきである。
いわゆる刈分小作地の一部で基準時後自創法第二条第二項の小作地となつた土地につき、従前の「作人」であつた小作人らによつてなされた遡及買収の申請が違法とされた事例
自作農創設特別措置法6条の2,自作農創設特別措置法6条の4
判旨
刈分耕作から小作地等への耕作者・耕作形態の変更があっても、その実態が一団の土地における継続的な耕作と認められる場合には、自作農創設特別措置法(以下「自創法」)6条の4にいう「耕作の業務をやめた」には該当しない。刈分地を自作地と小作地に分割したとしても、従前からの作人が継続して耕作を続けている限り、遡及買収の対象とはならない。
問題の所在(論点)
自創法2条2項の小作地または3条5項2号の自作地に関連し、刈分地から小作地等への耕作形態の変更がなされた場合に、自創法6条の4にいう「耕作の業務をやめた」ものとして、遡及買収の対象となるか。
規範
自創法6条の4(および関連する買収規定)にいう「耕作の業務をやめた」か否かの判断においては、単なる形式的な契約形態の変更や耕作者の名義変更のみを重視すべきではない。土地を一つの単位として捉え、その利用実態に基づき、従前からの耕作者が継続して耕作に従事していると認められる場合には、同条の要件に該当しないと解するのが相当である。
重要事実
被上告人(地主)所有の「刈分地」につき、昭和22年3月頃、被上告人と作人6名との間で合意が成立した。その内容は、従来の収穫物分割(刈分)による耕作をやめ、刈分地の約4割を被上告人の自作地、約6割(本件農地)を作人の小作地として分割して耕作するものであった。この合意に基づき、作人らは従前どおり本件農地の耕作を継続した。これに対し、本件農地が自創法の基準時以降に「耕作の業務をやめた」として遡及買収の対象になるかが争われた。
事件番号: 昭和34(オ)1181 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、買収対象地の選択は行政庁の裁量に属し、地主に選択権はない。また、宅地化の予見可能性がない農地は同法5条5号の除外事由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人の所有する本件農地に対し、国が自作農創設特別措置法に基づき買収処分を行った。これに対し上告人は…
あてはめ
まず、刈分地は地主と作人の関係が請負や雇用に類する性質を有することから、自創法上は「自作地」に該当する。本件合意により、その一部が「小作地」へと形式上変更されたが、合意の内容は従来の収穫分割割合に応じた土地の分割にすぎない。また、作人らは合意成立後も本件農地において「従前どおり」耕作を継続している。このように農地を一団として見た場合、耕作の主体や実態には断絶が認められないため、耕作の業務をやめたとはいえないと評価される。
結論
本件農地は、耕作者・耕作形態に変更があったとしても、実態として「耕作の業務をやめた」ものには該当しない。したがって、自創法に基づく遡及買収をすることはできない。
実務上の射程
戦後の農地改革関連法の解釈であるが、現代の行政法・土地法においても、法規の要件(「廃止」「中止」等)の充足を判断する際、形式的な権利関係の変動よりも実態的な利用状況の継続性を重視する判断枠組みとして参照し得る。特に、契約名義の変更があっても実質的な利用主体が同一である場合の「継続性」の判断に有用である。
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…
事件番号: 昭和28(オ)241 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: その他
自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号に該当する農地は、他の農地を遡及買収する場合でも在村地主の小作地保有面積の計算上小作地に算入することはできない。
事件番号: 昭和30(オ)718 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地…
事件番号: 昭和27(オ)357 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法(以下「自創法」)による不在地主の農地買収規定は、居住移転の自由を侵害せず、地主間の区別取扱いも憲法に違反しない。また、同法に基づく買収価格の定めも憲法29条3項に反しない。 第1 事案の概要:上告人は、自創法に基づき不在地主として農地を買収されたが、食糧供出の割当や肥料配給が…