判旨
自作農創設特別措置法(以下「自創法」)による不在地主の農地買収規定は、居住移転の自由を侵害せず、地主間の区別取扱いも憲法に違反しない。また、同法に基づく買収価格の定めも憲法29条3項に反しない。
問題の所在(論点)
1. 自創法による不在地主の農地買収規定が、憲法22条(居住移転の自由)に違反するか。 2. 在市町村地主と不在地主を区別する仕組みが平等原則に反するか。 3. 自創法6条3項所定の買収価格が憲法29条3項に違反するか。
規範
自創法3条等の不在地主に対する農地買収規定は、国民の居所移転の自由を妨げるものではない。また、在市町村地主と不在地主を区別して取り扱うことは、自創法の目的達成のための合理的な区別であり、違憲の評価を受けない。さらに、同法6条3項の買収価格は憲法29条3項の「正当な補償」に反しない(大法廷判決参照)。
重要事実
上告人は、自創法に基づき不在地主として農地を買収されたが、食糧供出の割当や肥料配給が住所地で行われていること等を理由に、自身の住所が農地所在地の村内にあると主張して買収の無効を訴えた。また、不在地主を対象とする買収制度自体が居住移転の自由を侵し、かつ不当に低い買収価格が財産権を侵害するとして違憲性を主張した。
あてはめ
食糧供出等の行政上の手続が特定の地で行われるとしても、直ちに自創法上の住所認定を拘束するものではなく、事実関係に照らせば上告人の住所が当該村内にないとの認定は維持される。自創法は不在地主の農地買収を規定するが、これは農地の効率的利用という目的のための制度的制約であり、居所移転の自由そのものを制限しない。また、買収価格については、先行する大法廷判決の趣旨に鑑み、正当な補償の範囲内として合憲と解される。
結論
本件買収規定および買収価格の定めは合憲であり、上告人の住所が農地所在地の外にあると認定した原判決に違法はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
農地改革という特殊な歴史的文脈における判決であるが、公共の福祉による財産権の制約や、目的達成のための合理的な区別(平等原則)、および「正当な補償」の意義に関する基礎的な判断枠組みとして参照される。特に、居住移転の自由との関係で間接的な制約が違憲とはならない点に射程を有する。
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