判旨
農地の合意解約が一応適法に成立した場合であっても、その内容が正当なものとは認められない限り、当該合意解約を理由に農地の買収計画を排除することはできない。農地の集中を生じない場合であっても、適法な合意解約の存在のみによって遡及的な買収計画の策定が制限されるものではない。
問題の所在(論点)
適法な合意解約が存在する場合に、行政庁が当該農地を買収対象から除外しないことは許されるか。また、合意解約の存在が遡及的な買収計画の策定を妨げる事由となるか。
規範
農地調整法に基づく市町村農地委員会の承認を要しない合意解約が一応適法に成立したとしても、その内容が正当なものといえない場合には、当該農地を買収対象から除外しない処分は適法である。また、農地の集中が生じない場合であっても、適法な合意解約があることのみをもって、直ちに遡及的な買収計画を定めることができないと解すべきではない。
重要事実
上告人と小作人Dとの間で本件小作地の合意解約が成立した。上告人は、農地調整法9条の承認を要しない適法な合意解約があった以上、農地の買収計画(遡及的なものを含む)を定めることはできず、本件小作地を買収から除外すべきであると主張した。また、上告人はDに比して生活状態が困窮している旨を主張したが、原審は、本件買収により上告人の生活状態がDのそれに比して著しく悪くなるものとは認められないと判断した。
あてはめ
本件における合意解約は一応適法に成立しているが、諸般の事情(生活状態の比較等)に照らし、その内容は正当なものとは認められない。上告人とDの生活状態を比較しても、買収によって上告人が著しく不利な状況に置かれる事実は認められない。したがって、適法な合意解約があるとしても、それのみで行政庁が買収を控えるべき義務を負うものではなく、買収計画の策定は正当である。なお、農地の集中が生じない場合であっても、買収計画の策定を妨げるものではない。
結論
本件合意解約が正当なものといえない以上、被上告人が本件小作地を買収から除外しなかったことは違法ではない。買収を有効とした原判決は維持される。
事件番号: 昭和25(オ)419 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであ…
実務上の射程
農地改革期の買収処分に関する判例であるが、私人間で成立した適法な契約関係(合意解約)があったとしても、公益的・行政的な目的(自作農創設等)に基づく行政処分を直ちに制約するものではないことを示している。特に行政法の文脈では、私法上の形成行為と行政処分の要件との関係性において、私法上の有効性が必ずしも行政処分の違法性を導かない事例として位置づけられる。
事件番号: 昭和25(オ)221 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
昭和二二年法律第二四一号による自作農創設特別措置法改正後の同法第六条の二第二項各号に該当する場合は、右改正前の同法附則第二項による農地買収計画も違法である。
事件番号: 昭和25(オ)59 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
昭和二〇年法律第六四号による改正前の農地調整法第九条第一項及び第三項は、合意によつて賃貸借契約を解約する場合には適用がない。
事件番号: 昭和24(オ)155 / 裁判年月日: 昭和28年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「小作地」とは、正権原に基づく耕作者の地位を安定させる趣旨から、無権利者が耕作する土地はこれに含まれない。賃貸借が合意解除され消滅した後に、当初から賃貸人の承諾なく耕作していた転借人が占有する土地は、同法の小作地に該当しない。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)…
事件番号: 昭和30(オ)718 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地…