判旨
農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。
問題の所在(論点)
農地の合意解約がなされた場合において、その有効性を判断するために当事者の生活状態を比較衡量することは許されるか。自作農創設特別措置法16条および施行令17条等の解釈が問題となる。
規範
農地の解約等の制限に関する判断において、合意解約の成否のみならず、その解約が適法かつ正当といえるか否かは、自作農創設特別措置法(現・農地法)の目的に照らし、当事者(小作人および地主等)の生活状態や諸般の事情を具体的に比較衡量して決すべきである。
重要事実
上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであることを認めつつも、その解約の正当性を判断するために、上告人とD等の生活状態を比較検討した。これに対し、上告人は解約が合意によるものであれば直ちに有効とされるべきであり、生活状態の比較等を行うことは理由不備や違法にあたると主張して上告した。
あてはめ
農地の譲渡や解約に関する規制は、耕作者の地位の安定と農業生産力の維持・増進を目的とするものである。本件において、原判決が合意解約の事実を認定した上で、なおその解約が正当であるかを判断するために上告人とD等の生活状態を比較したことは、自創法16条施行令17条が原則として昭和20年11月23日現在の小作人への売渡しを予定している趣旨に合致する。したがって、当事者間の生活実態を比較して正当性を否定した判断に違法はない。
結論
農地の解約における正当性の判断において、当事者の生活状態を比較衡量することは正当であり、原判決に理由不備や違法は認められない。
事件番号: 昭和25(オ)25 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の合意解約が一応適法に成立した場合であっても、その内容が正当なものとは認められない限り、当該合意解約を理由に農地の買収計画を排除することはできない。農地の集中を生じない場合であっても、適法な合意解約の存在のみによって遡及的な買収計画の策定が制限されるものではない。 第1 事案の概要:上告人と小…
実務上の射程
農地法上の「正当事由」や解約の効力を争う際、単なる形式的な合意の有無だけでなく、離職後の生活基盤の確保や耕作の必要性といった実質的要素(生活状態の比較)が判断に直結することを示す。答案上は、農地法等の強行法規的性質を背景とした実質的判断の必要性を根拠づける際に活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)59 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
昭和二〇年法律第六四号による改正前の農地調整法第九条第一項及び第三項は、合意によつて賃貸借契約を解約する場合には適用がない。
事件番号: 昭和30(オ)718 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地…
事件番号: 昭和28(オ)1358 / 裁判年月日: 昭和30年7月15日 / 結論: 棄却
農地所有者間で交換的に相手方所有農地を耕作している場合、右農地は小作地である。
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…