農地所有者間で交換的に相手方所有農地を耕作している場合、右農地は小作地である。
交換的耕作地は小作地か
自作農創設特別措置法2条2項
判旨
農地の交換的耕作は、互いに相手方の農地を耕作し、その対価として自己の農地を相手方に耕作させるものであるから、自作農創設特別措置法2条2項にいう「小作地」に該当する。
問題の所在(論点)
農地の所有者が、他者の所有する農地を耕作する代わりに、自己の所有する農地をその他者に耕作させる「交換的耕作」を行っている場合、当該自己所有農地は自作農創設特別措置法2条2項の「小作地」に該当するか。
規範
自作農創設特別措置法2条2項の「小作地」とは、所有者がその耕作の業務を自ら行わない農地を指す。農地の交換的耕作がなされている場合、農地所有者が互いに相手方所有の農地を自己の耕作に供し、その対価として自己所有の農地を相手方に耕作させているものと評価できるため、特段の事情がない限り、当該農地は「小作地」に該当する。
重要事実
上告人は、自己が所有する二筆の農地について、義弟であるDに耕作させていた。一方で上告人は、これと交換的に、Dが所有する農地を借り受けて耕作していた。このような、いわゆる「交換的耕作」が行われている状況において、上告人所有の農地が自創法上の「小作地」として買収の対象となるか否かが争点となった。
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…
あてはめ
本件における上告人とDとの関係をみると、上告人は自己所有の農地を自ら耕作せず、Dに提供している。この提供は、D所有の農地を上告人が耕作することの対価として行われており、相互に農地の利用権を交換しているといえる。このような交換的耕作の事実は、農地所有者相互の間で互いに相手方の農地を自己の耕作に供し、その対価として自己所有の農地を相手方に耕作させるものと評価される。したがって、特段の事情がない限り、上告人所有の農地は自ら耕作していない農地として、同法2条2項にいう小作地としての性質を具備している。
結論
本件農地は自作農創設特別措置法2条2項にいう「小作地」に該当する。
実務上の射程
自作農創設特別措置法下の判断ではあるが、農地の「所有」と「耕作」が分離している実態を重視し、交換という形式をとっていても実質的に他者に耕作させている以上は「自作」ではないとする判断枠組みは、農地法上の権利移動や賃貸借の認定においても示唆を与える。答案上は、対価関係の有無を検討する際に「土地利用権の相互提供」が賃貸借(小作)の対価となり得ることを示す論拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)718 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地…
事件番号: 昭和24(オ)155 / 裁判年月日: 昭和28年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「小作地」とは、正権原に基づく耕作者の地位を安定させる趣旨から、無権利者が耕作する土地はこれに含まれない。賃貸借が合意解除され消滅した後に、当初から賃貸人の承諾なく耕作していた転借人が占有する土地は、同法の小作地に該当しない。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)…
事件番号: 昭和25(オ)419 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであ…
事件番号: 昭和28(オ)308 / 裁判年月日: 昭和32年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の売渡しは、原則として買収時期の耕作者を対象とすべきであり、客観的評価において当該耕作者を不適当と認める特段の事情がない限り、他の者を相手方とする売渡計画は違法となる。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法により買収した農地について、売渡しの相手方の選定が問…